懐かしのマイナー馬たち

懐かしの競走馬たち

あまり取り上げられることのない思い出の競走馬をきままに語ります。

スポンサーリンク

未完の大器~ニューイングランド

 

プロフィール

ニューイングランド

1997年4月4日 牡馬

父  サンデーサイレンス

母  クラウンフォレスト

母父 Chief's Crown

厩舎 白井寿昭(栗)

7戦4勝

主な勝鞍 STV賞(1000万下)、湯川特別(500万下)

 

競走生活

JRA

2歳:1戦1勝 新馬

4歳:6戦3勝 STV賞(1000万下)、湯川特別(500万下)

※年齢は当時は旧年齢ですが、現在の表記に合わせています。

 

2歳12月に阪神芝2000mでデビューし、圧倒的1番人気に応え快勝します。ちなみに2着は後にダイヤモンドS(G3)を勝利し、3歳の春重賞でも連続3着(きさらぎ賞(G3)、毎日杯(G3))したキングザファクトでした。しかし、その後骨折してしまい、4歳の春まで休養となります。

4歳3月に阪神ダ1800mで復帰すると圧倒的1番人気に応え6馬身差で圧勝します。続く京都ダ1800mの900万下、芝に戻って東京芝1600mの富嶽賞(900万下)ともに1.7倍の圧倒的1番人気に推されますが、僅差の2着に敗れます。

そのまま夏の北海道に転戦し、降級初戦の湯川特別(500万下)では後にみなみ北海道S(OP)を勝つイングランドシチー、鳴尾記念(G3)を勝つメジロマントル白毛馬のシラユキヒメを抑えて快勝します。続くSTV杯(1000万下)もレディソーサリスらを抑えて先行策から抜け出し連勝となります。なおここまでの6戦すべて1倍台の圧倒的な1番人気に推されています。

次のレースに選んだのは格上挑戦で函館記念(G3)でした。重賞勝ち馬が5頭出走し、また重賞好走馬も多い中、エアスマップに次ぐ2番人気に推されます。6番手の逃げ先行馬を見る形でレースをするも流れ込むような形になってしまい、勝ったロードプラチナムの7着に敗れます。なお、1-3着が9番人気、14番人気、10番人気と大荒れの結果となりました。

その後は出走することなく、引退となりました。

 

血統構成

サンデーサイレンスは現役時代はケンタッキーダービープリークネスSの2冠を制し、BCクラシックも制しています。引退後は日本で種牡馬入りし、日本の血統図を塗り替えてしまうほどの大種牡馬となります。3冠馬ディープインパクトをはじめ、多数のG1馬、重賞勝ち馬を輩出し、勝利数は現時点で歴代1位となっています。

 

母クラウンフォレストは名種牡馬Woodmanの妹としてアメリカで産まれ、日本で走り8戦1勝の成績を残しています。繁殖入り後は本馬の他には地方で11勝を挙げたマツマエザクラがおり、孫の世代からは共同通信杯(G3)を勝ったハンソデバンドが出ています。

 

母の父Chief's Crownは大種牡馬Danzigの産駒としてアメリカで走りBCジュヴェナイル(G1)を制し、エクリプス賞最優秀2歳牡馬に選出されました。他にトラヴァーズS(G1)などG1を7勝しています。3冠レースも3、2、3着と好走しました。種牡馬入り後は英ダービー(G1)を制したエルハーブBCターフ(G1)のチーフベアハートセントジェームズパレスS(G1)のGrand Lodgeなどを輩出しました。母の父としてもダービー馬ディープスカイ、国内外のG1を6勝したオールラウンダーのアグネスデジタルを輩出しています。

 

私の注目ポイント

なぜ私がニューイングランドを取り上げたかをご紹介します。

1.ケガさえなければと思わせた競走生活

デビュー戦を快勝し、2着に入ったキングザファクトきさらぎ賞(G3)、毎日杯(G3)で連続3着となったことからもクラシックでも主役の1頭として2冠馬エアシャカールやダービー馬アグネスフライトとどのようなレースをしていたのかと想像が膨らみます。

長期休養からの復帰後も脚元を考慮してダート戦を使いつつ、休みなく使って5戦3勝2着2回で準オープンまで上がってきて、現役最後のレースとなった函館記念(G3)で重賞初挑戦まで来ていました。使い詰めであったため、この後一息入れて復帰することが出来ていれば、もしかすると重賞、G1をというチャンスはあったのかもしれません。

 

2.良血を買われて種牡馬入り

競走馬としては大きな活躍はできませんでしたが、名種牡馬Woodmanの甥であり、サンデーサイレンスの仔であるということもあり種牡馬入りしました。近親には13戦全勝でBCディスタフ(G1)も勝利したPersonal Ensign、BCディスタフ(G1)を圧勝したInside Informationなど名牝を輩出したダマスカス系種牡馬Private AccountやWoodmanの兄弟にあたるGadabout、Chromiteがいます。

種付け料も比較的安価ということもあり、2003から2006年は100頭を超す繁殖牝馬を集めました。

 

3.個性派の産駒たち

比較的繫殖牝馬の質が低いとされ、CPI(配合相手の繁殖牝馬の仔の収得賞金の平均に対する比率)は0.67(本日時点)だったこともあり、中央競馬でデビューする産駒は少なかったですが、個性的な産駒を輩出しています。

ラジオNIKKEI賞(G3)を勝ったレオマイスター。雷鳴とどろく中、内田博幸騎手の剛腕で捲ってラジオNIKKEI賞(G3)を勝った時は驚きました。6戦してラジオNIKKEI賞(G3)を含め3勝2着1回と福島巧者であり、重賞を勝ったものの賞金の関係で降級してしまいましたが、同地の阿武隈S(1600万下)で勝ち再度オープンに昇級しています。

珍名馬としても有名だったネコパンチ。晩成型で5歳になり潮来特別(1000万下)を勝ちあがると続く格上挑戦のメトロポリタンS(OP)で2着、やはり格上挑戦となった夏のみなみ北海道S(OP)でメイショウクオリアなどを破りオープン入りします。その後、重賞の壁に阻まれますが、6歳の日経賞(G2)では鞍上に江田照男を迎え、思い切った大逃げをし、167.1倍の12番人気ながら東京優駿(G1)2着のウインバリアシオン、G2を3勝しこの後香港のクイーンエリザベスS(G1)を勝つルーラーシップなどに3馬身半を付けて逃げ切ってしまいます。この実績や名前で注目を集め、宝塚記念にもファン投票17位で選出されました(結果は16着)。

他にも阪神・京都の障害レースに強く重賞3勝したテイエムハリアー阪神スプリングジャンプを人気薄で制したトーワヒヨシマル、福山大賞典や福山王冠など35勝を挙げた福山の雄クラマテングなど活躍馬は多くはありませんが、強烈な印象を残す産駒が多いような気がいたします。

 

 

 


競馬ランキング

最強の重賞未勝利馬の一頭~ロイスアンドロイス

 

プロフィール

ロイスアンドロイス

1990年3月10日 牡馬

父  トニービン

母  ザッツマイパル

母父 Key to the Mint

厩舎 松山康久(美)

28戦3勝

主な勝鞍 サロベツS(1500万下)、むらさき賞(1500万下)、天皇賞秋(G1)3着、ジャパンカップ(G1)3着

 

競走生活

JRA

2歳:2戦0勝

3歳:12戦1勝 未勝利、セントライト記念(G2)2着、ラジオたんぱ賞(G3)3着

4歳:7戦2勝 サロベツS(1500万下)、むらさき賞(1500万下)、天皇賞秋(G1)3着、ジャパンカップ(G1)3着、オールカマー(G3)3着

5歳:4戦0勝

6歳:3戦0勝

 ※年齢は当時は旧年齢ですが、現在の表記に合わせています。

 

2歳12月にデビューし、5番人気ながら大物と言われたクエストフォベストの2着と健闘します。折り返しの新馬戦も向こう正面から上がっていくものの2着に惜敗します。

年が明けて生涯唯一となるダート戦に挑み、圧倒的1番人気に推されますが、勝った後に中山大障害を制する名ジャンパー・ノーザンレインボーから10馬身離された3着に敗れます。その後、芝に戻って3戦しますが、すべてのレースで勝ち馬とほぼ同じ位置にいながら0.2秒差以内の2着に敗れます。

そのような中、陣営は東京優駿(G1)のトライアル青葉賞(OP)に挑戦します。当時は、2着までに東京優駿(G1)の優先出走権が与えられましたが、収得賞金ゼロでは出走できないため、OPレースである青葉賞は勝つ必要がありました。レースは中団から良い脚で追い込んできて、あわやの場面を作るもののステージチャンプから0.4秒差の3着に敗れます。ここまで2着5回、3着2回、着外なしの本馬を最強の未勝利馬と呼ぶ声もありました。

次の未勝利戦では初めて後藤騎手を鞍上に迎え、積極的な競馬から5馬身差で圧倒し、初勝利を挙げます。次走にはラジオたんぱ賞(G3)を選び、4角2番手も最後は離され3着となります。新潟開催も走りますが、500万下特別を連続して2着と勝ちきれません。

陣営は再度菊花賞(G1)のトライアルであるセントライト記念(G2)に挑戦します。7番人気に甘んじます。人気に反発するように中団から良く伸びましたが、勝ったラガーチャンピオンを捉えることはできず2着になります。ただ、菊花賞の出走権を手にするとともに収得賞金も加算し、最強の1勝馬と呼ぶ声も出てきます。

菊花賞(G1)は1勝馬にも関わらず、ビワハヤヒデウイニングチケットナリタタイシンの3強に次ぐ4番人気(複勝は3番人気)に推されますが、初の着外となる7着に敗れます。つづく冬至S(1500万下)はこの年12戦目となり、疲れがあったのか5着となります。

翌年は5月の東京開催まで休み、薫風S(1500万下)で復帰すると2着に好走し、続くむらさき賞(1500万下)を快勝しオープン馬になります。エプソムC(G3)は2番人気に推されるも0.4秒差ながら女傑ワコーチカコの7着に敗れると降級して再び準オープン馬となります。しかし、続くサロベツS(1500万下)を接戦の末、勝利してすぐにオープン馬に復帰します。

続いてオールカマー(G3)に参戦すると、前年の菊花賞を勝ち、この年G1を2勝して最強古馬になったビワハヤヒデ、前年のダービー馬ウイニングチケットの同期2頭には敗れるものの3着を確保します。天皇賞秋(G1)は他の有力馬も多かったことから11番人気に人気を落としますが、ビワハヤヒデウイニングチケットが故障し、後方となる中、セキテイリュウオーとともに伸びてきて、ネーハイシーザーの3着と健闘します。

次走にはジャパンカップ(G1)を選びます。外国馬が上位人気を占め、本馬も8番人気となります。しかし、レースでは残り200mで一瞬突き抜け、勝ったかと思わせましたが、内からマーベラスクラウンパラダイスクリークに差し返され、日本馬では最上位人気だったマーベラスクラウンの3着に敗れます。この時点では最強の重賞未勝利馬、最強の3着馬などという呼ばれ方もしていました。

休みなく7戦し、G1でも健闘したことから疲れも出て休養に入り、4月の大阪杯(G2)に出走しますが、ここでも僅差の4着に敗れます。再び休養に入り、富士S(OP)で復帰するとこの次走でハクチカラ以来36年ぶりの平地海外重賞制覇となる香港国際C(G2)を制するフジヤマケンザン、すでに宝塚記念(G2)2着の実績があり、のちに安田記念(G1)を制するタイキブリザードの3着に入り、健在なところを見せます。つづくジャパンカップ(G1)は後方から良い脚で追い込むも勝ったランドから0.8秒差の7着、有馬記念(G1)も勝ったマヤノトップガンの7着に敗れます。

翌年の6歳(旧7歳)はAJCCから始動し、勝ったカネツクロスを捉えられず4着。日経賞(G2)8着、天皇賞春(G1)11着に敗れます。立て直しを図るべく放牧に出たものの、放牧先で腸捻転を発症し、残念ながら亡くなってしまいます。

 

血統構成

トニービンはイタリア調教場として27年ぶりに凱旋門賞を制覇し、ミラノ大賞典やジョッキークラブ大賞を制しています。日本で種牡馬入り後はリーディングサイアーにも輝き、ダービー、ジャパンカップを勝ったジャングルポケット天皇賞秋、オークスを勝ったエアグルーブ、ダービーのウイニングチケット、2冠馬ベガなど多数の活躍馬を輩出し、父系、母系としても日本競馬に大きな影響を与えています。

 

ザッツマイパルアメリカで走り1勝を挙げています。当初はアメリカで繁殖生活を送っていましたが、日本に来て本馬の他にオールカマー(G2)で3着し、福島民報杯(OP)を勝ったザッツマイドリームなどを輩出しています。

 

母の父Key to the Mintはアメリカで走りトラヴァーズSなど勝利し、エクリプス賞最優秀3歳牡馬に選出されています。種牡馬入り後はBCディスタフのJewel Princess、トラヴァーズSJava Goldなどを輩出し、母父としてもキングジョージ連覇のSwain、BCディスタフのInside Informationなどを輩出しています。日本では名繁殖牝馬ダンシングキイや変則2冠馬ディープスカイなどの母系でみることができます。

 

私の注目ポイント

なぜ私がロイスアンドロイスを取り上げたかをご紹介します。

1.最強の・・・

通算成績は28戦3勝2着9回3着7回であり、5歳(旧6歳)ジャパンカップ以降の晩年のレースを除けば、ほとんどのレースで3着に入っています。敗れた4戦も適正距離外だったと思われる菊花賞(G1)、その年12戦目の冬至S(OP)と理由があったり、中1週で0.4秒差で大接戦ながら8着のエプソムC(G3)、休み明けながら0.2秒差4着と健闘した大阪杯(G2)と着順ほどは敗れていないレースになります。

上がり3ハロンもほとんど3番手以内と勝ちきれなかったものの常に堅実なレースを見せてくれました。

そのため、

・未勝利ながら3着となった青葉賞(OP)後は最強の未勝利馬、

・初勝利後にセントライト記念(G2)2着で菊花賞(G1)に出走する頃は最強の1勝馬

・4歳(旧5歳)秋に強豪馬を向こうに回してのオールカマー(G3)、天皇賞秋(G1)、ジャパンカップ(G1)の3連続3着により最強の重賞未勝利馬、最強の3勝馬、最強の3着馬

などと呼ばれています。

ナイスネイチャの次の世代のブロコレ(ブロンズコレクター)の1頭として、語り継がれていくのではないかと思っています。

 

2.能力が高く、頭の賢い馬

後藤騎手はロイスアンドロイスと相性が良く、4回騎乗して2勝2着1回と好成績をおさめています。

その後藤騎手によると調教では、日々のメニューをすべて把握しており、鞍上の言うことを聞かないにもかかわらず、調教師から指示されたとおりの追い切りを消化したとのこと。「レースでも、その頭の良さが邪魔をしていた。彼は負けたくて負けていたのだ。きっと彼は2、3着というのを数えられたのだと思う」とコメントしています。

一方で背中に感動したとも言っており、能力の高さが伝わってくる発言です。

特にキャリアの前半の未勝利、条件馬時代は勝ち馬と同じような位置にいながら先着を許しており、先を譲ったのかと思ってしまうような結果になっています。

使える脚が短いという面はあったのかもしれませんが、能力をすべて解放していたらBWNの3強に割って入る力があったのかもしれないと想像してしまいます。

 

3.あわやのジャパンカップ

1994年のジャパンカップでは、日本馬はビワハヤヒデウイニングチケットは直前の天皇賞で故障して引退、天皇賞ネーハイシーザー三冠馬ナリタブライアンは出走を見合わせとなり、当時の日本馬の枠は5頭でしたが、G1馬はゼロでした。

本馬以外の他の4頭はこのレース前まで

ナイスネイチャ:重賞4勝もG1では有馬記念3年連続3着を含む3着4回4着4回、他の重賞でも2着3回、3着3回

フジヤマケンザン菊花賞(G1)3着の実績があるが、他は父内国産限定の中日新聞杯(G3)1着とオープン3勝、重賞2着4回

マチカネタンホイザ:重賞3勝もG1では3着1回4着5回(このレースは鼻出血で除外)

マーベラスクラウン:前走阪神で行われた京都大賞典(G2)でレコード勝ちして重賞2勝目とはいえ、重賞で2着4回3着1回

と実績はそれなりにあるものの勝ちきれないメンバと評されておりました。

なお、日経賞を勝ち、菊花賞2着のステージチャンプが補欠に回り、本馬は重賞未勝利にもかかわらず力量上位と判断されての出走でした。

そのため、海外馬が上位人気を独占し、日本馬最上位人気は勢いのあったマーベラスクラウンの6番人気で、本馬も8番人気にとどまります。レースでは残り200mで一瞬突き抜け、遂に勝ったかと思わせましたが、内からマーベラスクラウンパラダイスクリークに差し返されてしまいます。ただ、いつになく強気の競馬で強いレース内容だったように思います。

ちなみに勝ったマーベラスクラウン騎乗の南井騎手はこの年G1を4勝目となり、年末の有馬記念(G1)をナリタブライアンで制し、年間G1を5勝の当時の新記録を樹立しています(現在はルメール騎手の8勝)。

 

 


競馬ランキング

オルフェーヴル世代の2番手~ウインバリアシオン

 

プロフィール

ウインバリアシオン

2008年4月10日 牡馬

父  ハーツクライ

母  スーパーバレリーナ

母父 Storm Bird

厩舎 松永昌博(栗)

23戦4勝

主な勝鞍 日経賞(G2)、青葉賞(G2)、東京優駿(G1)2着、菊花賞(G1)2着、天皇賞(春)(G1)2着、有馬記念(G1)2着

 

競走生活

JRA

2歳:3戦2勝 野路菊S(OP)、新馬

4歳:7戦1勝 青葉賞(G2)、東京優駿(G1)2着、菊花賞(G1)2着、神戸新聞杯(G2)2着

5歳:4戦0勝 天皇賞(春)(G1)3着、日経賞(G2)2着

6歳:2戦0勝 有馬記念(G1)2着

7歳:5戦1勝 日経賞(G2)、天皇賞(春)(G1)2着

8歳:2戦0勝 日経賞(G2)2着

 

2歳夏の小倉芝1800で鞍上に福永騎手を迎えてデビューし、1万人気に応え快勝します。続く野路菊S(OP)では同父のメイショウナルトを抑え、2連勝を飾ります。3戦目のラジオNIKKEI杯(G3)は先行策から伸びきれず、0.1秒差の4着となります。

3歳初戦のきさらぎ賞(G3)では後にG1を勝利するトーセンラーオルフェーヴル(J.G1を勝つマーベラスカイザーも出走しています)を抑えて1番人気となりますが、前走と同じように伸びきれずトーセンラーの4着となります。続く弥生賞(G2)も接戦ながら7着となり、東京優駿(G1)を目標に切り替えます。鞍上に安藤勝己騎手を迎えて青葉賞(G2)に出走し、後方一気で初重賞制覇となります。これは父ハーツクライにとっても初重賞となりました。

そして、東京優駿(G1)では青葉賞を勝ったにもかかわらず10番人気と低評価でしたが、後方から一度は先頭に立つ走りでオルフェーヴルを苦しめるものの2着に敗れます。ただ、3着のベルシャザールには7馬身の着差を付け、力のある所を見せつけます。

秋は神戸新聞杯(G2)から始動し、超スローペースで4コーナーではオルフェーヴルに並びますが、突き放され2着。菊花賞(G1)は末脚に掛け、上がり最速を記録しますが、三度目のオルフェーヴルの2着となりました。続くジャパンカップ(G1)は後方待機から3コーナーで2番手につけるレースをするもブエナビスタの5着となります。

4歳は京都記念(G2)から始動しますが、直線で伸びを欠き6着。日経賞(G2)は大逃げの江田照男騎手鞍上のネコパンチを捉えることができず2着となり、天皇賞春(G1)でも大逃げのビートブラックを捉えることができず3着となります。宝塚記念(G1)で4着に敗れた後、左前浅屈腱炎を発症し、長期休養となります。

5歳11月の金鯱賞(G2)で復帰すると長期休養明けながら中団から脚を伸ばして同父カレンミロティックの3着に入ります。返す刀で有馬記念(G1)に出走するとオルフェーヴルゴールドシップの2強ムードながら、オルフェーヴルのまくりについていき、8馬身差をつけられるもののゴールドシップに先着する2着と健闘します。

6歳初戦は日経賞(G2)で有馬記念(G1)同様のまくる競馬で快勝し、3歳の青葉賞以来の重賞制覇となりました。続く天皇賞春(G1)は日経賞(G2)を勝った時の岩田騎手が騎乗停止となり、シュタルケ騎手となりますが、当日落馬負傷となり、代打の代打で武幸四郎騎手を鞍上に迎えます。直線良く追い込むも2連覇となったフェノーメノを捉えられずタイム差なしで2着となります。宝塚記念(G1)7着後に左前脚屈腱炎が再発し、12月まで休養となります。金鯱賞(G2)で復帰しますが15着となり、有馬記念(G1)も12着となります。

7歳は3度目となる日経賞(G2)に3歳弥生賞(G2)以来となる福永騎手で出走し、3回連続の連対となる2着と健闘します。続く天皇賞春(G1)は直線半ばで急に失速し、12着でゴール後に福永騎手が下馬します。左前浅屈腱不全断裂による競走能力喪失と診断され、引退が決まりました。

 

 

血統構成

ハーツクライは現役時代は有馬記念(G1)、ドバイシーマクラシック(G1)を制し、東京優駿(G1)などのG1で2着3回、”キングジョージ”(G1)で3着と国内外のレースで活躍しました。有馬記念は無敗の三冠馬ディープインパクトに初めて土をつけるとともに日本馬として唯一先着したレースとなっています。種牡馬としてはワンアンドオンリーやドウデュースが東京優駿(G1)を制し、アドマイヤラクティジャスタウェイリスグラシューが海外G1を制覇、Yoshidaが日本生産馬初の米ダートG1を制覇するなど産駒が国内外で活躍をしています。

母スーパーバレリーナはカナダで産まれ、日本で競走生活を送りましたが、4戦して未勝利でした。引退後は繁殖牝馬となり、コンスタントに産駒を産み、本馬の他には地方を含め多くの産駒が勝ち星を挙げています。

母の父Storm Birdはカナダで産まれ2歳時にデューハーストS(G1)を制すなど5戦5勝で英愛2歳牡馬チャンピオンに選ばれています。種牡馬入り後は大種牡馬Storm Cat英オークス(G1)のバランシーン、プリークネスS(G1)のサマースコールなどを輩出しました。

 

私の注目ポイント

なぜ私がウインバリアシオンを取り上げたかをご紹介します。

1.ハーツクライ初年度産駒

ハーツクライは個人的にPOG保有していた馬であり、いまだに好きな馬筆頭です。種牡馬入りはディープインパクトと同期になりましたが、ハーツクライも負けずに活躍馬を出してくれると期待しておりました。理由の一つとしては、同配合であるアドマイヤベガが活躍馬を出していたこともあります。(ハーツクライサンデーサイレンス×トニービン×リファール、アドマイヤベガサンデーサイレンス×トニービン×ノーザンダンサー。リファールはノーザンダンサーの子供)

ディープインパクト産駒は早くから活躍し、ダノンバラードラジオNIKKEI杯(G3)を勝ち、年明けて桜花賞(G1)を勝つ中、ハーツクライ産駒は勝ち星こそ挙げるものの青葉賞前までにOPを3勝のみと期待ほどの結果が出ていませんでした。そのような中、本馬がダービートライアルである青葉賞(G2)を6番人気ながら勝利し、ダービーでも2着したことでホッとした記憶があります。

ただ、その年の重賞制覇は本場の青葉賞のみとやや期待を裏切る感じでしたが、年が明けて同世代のギュスターヴクライが逸走があったもののオルフェーヴルを破って阪神大賞典(G2)を制するとやはり現役時代同様に晩成血統なのだろうという評判が付くようになりました。実際に4歳秋に1000万下を突破する馬が多く出てきており、2世代目で初ハーツクライ産駒G1初勝利となったジャスタウェイ天皇賞秋(G1)も4歳の秋になります。

その後は関係者の対応が進んだこともあり、2歳G1や東京優駿(G1)を勝つ馬も出てくるわけですが、当初は晩成の中長距離が主戦場であり、本馬についても古馬になったらもっと強くなると期待していました。残念ながら怪物オルフェーヴルやケガに阻まれてしまい、G1を制することはできませんでしたが、初年度産駒としてG1制覇を願い続けた馬でした。

 

2.オルフェーヴルとの対決

同期の三冠馬オルフェーヴルとは7度対戦し、1勝6敗とほとんど勝つことはできませんでした。G1で3度ワンツーを決めており、この世代としてはこの2頭が中長距離では抜けているのではないかと思っています。

よくあるタラレバで言っても詮無いことではあるのですが、生まれた世代が悪かったのかなと思わざるを得ません。

なお、短距離では史上最強スプリンターの一頭とも言えるロードカナロアや3歳で安田記念(G1)を勝ったリアルインパクトもいるなど印象の強い馬の多い世代になります。

 

3.種牡馬としての期待

引退後は乗馬になるという話がありましたが、最終的には青森で種牡馬となりました。北海道以外はかなり厳しい種牡馬生活とはなりますが、数少ない産駒から初年度産駒から3勝クラスの鈴鹿Sを勝利し、地方移籍後に東京大賞典(G1)にも出走したドスハーツ、2年目産駒からチューリップ賞(G2)にも出走したバリコノユメを輩出するなどCPIを上回るAEIを叩き出しています。血統的にもNorthern Dancerの5×3×5、名牝Almahmoudの5×5を持つなどしっかりした背景もあり、そう甘いものではないことは理解していますが、個人的にはもっとチャンスがあれば自身を超えるような馬が出てくるのではないかと期待しています。

 

 


競馬ランキング

幻の最強馬~シルバーステート

 

プロフィール

シルバーステート

2013年5月2日 牡馬

父  ディープインパクト

母  シルヴァースカヤ

母父 Silver Hawk

厩舎 藤原英昭(栗)

5戦4勝

主な勝鞍 垂水S(1600万下)

 

競走生活

JRA

2歳:3戦2勝 紫菊賞(500万下)、未勝利

4歳:2戦2勝 垂水S(1600万下)、オーストラリアT(1000万下)

 

2歳夏の中京でデビューし、1番人気に推されます。2番手から抜け出しますが、のちにヴィクトリアマイル(G1)を勝つアドマイヤリードに差され2着となります。中1週の未勝利戦は持ったままで楽勝し、タイムも同日の中京2歳S(OP)よりも1.3秒早いものでした。秋の紫菊賞(500万下)は1.1倍の圧倒的人気に推されると好位追走から抜け出し上がり3ハロン32.7秒という驚異的なタイムで快勝します。

3歳になり共同通信杯(G3)に向かう予定でしたが、左前脚屈腱炎を発症し長期休養に入ります。

4歳5月に復帰するとオーストラリアT(1000万下)をスピードの違いから初の逃げを打ち、持ったまま快勝。このレースも33.3秒と逃げたにも関わらず最速を記録します。続く垂水S(1600万下)も逃げ、最後は押さえていたもののコースレコードタイの1.44.5で勝利します。その後、秋の毎日王冠(G2)を目指して調整していたものの右前脚屈腱炎を発症し、引退となりました。

 

 

血統構成

ディープインパクトは史上2頭目の無敗での三冠馬であり、古馬でも天皇賞春、宝塚記念ジャパンカップ有馬記念を制した名馬です。種牡馬入り後も三冠馬コントレイル、三冠牝馬ジェンティルドンナ日本ダービーキズナマカヒキワグネリアン、ロジャーバローズ、シャフリヤールなど数々のG1馬、重賞馬を輩出し、2012年から11年連続(2019年末時点)でリーディングサイアーに輝いています。

母シルヴァースカヤはアメリカ合衆国で産まれ、フランスで競走生活を送りました。クラシックディスタンスのG3を2勝するなど競走馬としても活躍しました。繁殖入り後は本場の他に豪G1ザメトロポリタンを勝ったSevilleを産んでいます。

母の父SilverHawkはアメリカ合衆国で産まれ、イギリスで競走生活を送りました。G3クレイヴァンSを勝利し、イギリスダービー3着、アイルランドダービー2着となっています。種牡馬入り後はグランプリ3連覇のグラスワンダーイギリスダービーのBenny the Dipなど中長距離のレースで活躍する産駒を多数輩出しました。

 

私の注目ポイント

なぜ私がシルバーステートを取り上げたかをご紹介します。

1.福永騎手が惚れ込んだ能力

クラシック三冠を制したコントレイルにも騎乗した福永騎手ですが、「とにかく規格外のエンジンを持っていた馬でした。排気量の大きさでいうと、今まで乗った馬のなかで間違いなく一番で、その評価はコントレイルと出会った今でも変わりません。」というくらい能力の高さを絶賛しています。

関係者が無事なら間違いなくG1を勝っていたはずというくらい能力は評価され、幻の最強馬という人もいるくらいです。

私が初めて見たのは4歳時でしたが、あまりスピード感を感じないにもかかわらず、上がり時計や勝ち時計が速いのには驚いた記憶があります。もっと上のクラスで走っていたらどのようなレースを見せてくれるのかと期待させられました。

 

2.種牡馬で発揮した高い資質

競走馬時代の高い資質から馬産地でも人気は高く初年度から191頭の種牡馬を集めました。産駒は2021年にデビューし、メリトクラシーが福永騎手を鞍上に新馬勝ちして産駒の初勝利を挙げ、秋にはウォーターナビレラがファンタジーS(G3)を勝利し、ファーストシーズンサイアーランキングではドレフォンに次ぐ2位に入ります。

ウォーターナビレラはその後の阪神JF(G1)3着、桜花賞(G1)2着と好走し、高い資質を伝えています。初年度産駒では他にもロンが野路菊S(OP)、セイウンハーデスがプリンシパルS(OP)を制し、コムストックロードやリカンカブールなども重賞で好走しています。

2年目産駒からはニュージーランドT(G2)を制したエエヤン、若葉S(OP)のショウナンバシットを出し、これからが期待されています。

産駒も登録された馬のほとんどが出走しており、心配された健康面も心配もなさそうに見えます。

 

3.スピードの持続力

福永騎手が規格外のエンジンというほど、次元の違うスピードでさっと先手を取ってしまい、終盤も最速かそれに近いタイムで駆け抜けてしまうという持続力が魅力だと思います。

ディープインパクト産駒は瞬発力、キレが優れている印象があり、本馬は少し異質な印象があります。これは母系のRoberto系のSilver HawkNijinsky系のNiniskiから受け継いだスタミナがうまく融合して持続力として表れているのかもしれません。

まだ母数が少なく、これから傾向は変わるかとも思いますが、種牡馬として小回りや中山が得意なのも持続力がある特徴を表しているのかなと感じます。

 

 


競馬ランキング

松永幹夫騎手引退日の奇跡~ブルーショットガン

 

プロフィール

ブルーショットガン

1999年5月2日 牡馬

父  サクラバクシンオー

母  オギブルービーナス

母父 スーパークリーク

厩舎 武宏平(栗)

68戦7勝

主な勝鞍 阪急杯(G3)

 

競走生活

JRA

2歳:5戦1勝 新馬

3歳:13戦3勝 清水S(1600万下)、キーンランドC(1000万下)、500万下

4歳:6戦1勝 桂川S(1600万下)

5歳:10戦0勝

6歳:10戦1勝 六甲アイランドS(1600万下)

7歳:10戦1勝 阪急杯(G3)

8歳:8戦0勝

9歳:5戦0勝

10歳:1戦0勝

 

2歳夏の函館でデビューすると折り返しの新馬戦を後にダービー3着となるマチカネアカツキを抑えて初勝利を挙げます。

その後、萌黄賞2着などがありましたが、勝ちきれず、3歳夏に再び函館に参戦すると3戦目の500万下を0秒9差で圧勝し、続く札幌のキーンランドC(1000万下)も圧倒的1番人気に応え連勝します。さらにオープンの札幌日刊スポーツ杯でも2着に入ります。

秋を迎え3戦目の清水S(1600万下)を勝利し、オープン入りします。

4歳は得意の夏の北海道から復帰すると3戦好走するも勝ちきることはできず、休みの間に降級していたため、秋に桂川S(1600万下)に出走し、勝ちを収めます。勝利しても1600万下であったため、格上挑戦した2回の函館SS(G3)や札幌日刊スポーツ杯(OP)を含め好走を続けますが、勝ちきるまでには至らず、6歳の暮れを迎えます。

この6歳最後の出走となった六甲アイランドS(1600万下)を勝利し、再度オープン入りとなります。

7歳となり2戦した後にこの日引退となる松永幹夫騎手を鞍上に迎え、阪急杯(G3)に挑みます。前走が13着で、かつ苦手の不良馬場ということもあり、11番人気の低評価でした。しかし、中団からレースを進めると直線では馬場の真ん中から1番人気のオレハマッテルゼを差し切り、重賞初制覇を飾るとともに松永幹夫騎手の引退に花を添えます。

その後は、着順ほどは負けていないものの函館SS(G3)での3着を最高に、10歳まで障害レースも含めて走りましたが、再び勝つことはできず引退し、阪神競馬場誘導馬となりました。

 

 

血統構成

サクラバクシンオースプリンターズSを連覇し、1400メートル以下で12戦11勝という名スプリンターでした。種牡馬入り後も自身のスピードをよく伝え、高松宮記念ショウナンカンプビッグアーサーNHKマイルCと朝日杯を勝ったグランプリボス中山大障害中山グランドジャンプブランディスを輩出しています。また、母の父としてもG1を7勝したキタサンブラックなどを輩出しています。

母オギブルービーナスはJRAで2勝を挙げた後、繁殖入りし初仔として本馬を産みます。他にも地方競馬を中心に活躍する馬を輩出しています。

母の父スーパークリーク菊花賞武豊騎手にG1初勝利をもたらした他、天皇賞秋・春連覇を達成しています。種牡馬入り後はスイートピーS2着のハダシノメガミや北海道競馬のステイヤーズC2着のハギノハンターなどを輩出しています。

 

私の注目ポイント

なぜ私がブルーショットガンを取り上げたかをご紹介します。

1.松永幹夫騎手引退日に重賞初勝利

毎年2月の騎手引退の時期になると必ず思い出すのが本馬の阪急杯です。鞍上に迎えたのは、この日で引退となる松永幹夫騎手でした。引退日の重賞騎乗となれば、ご祝儀で通常よりも人気になるものですが、本馬は3走前に1600万下を勝ちあがったものの重賞実績もなかったことから15頭中11番人気と低評価でした。また、馬場も苦手な不良馬場ということもあり、私もあまり期待せずに見ていました。

レースはローエングリンが不良馬場にしては速いペースで逃げ、直後に高松宮記念を制する1番人気のオレハマッテルゼが先頭に立とうとするところを馬場の真ん中から本馬が飛んできました。

レース後もしばらく何が起きたのかよくわからないくらいでしたが、騎乗していた松永幹夫騎手も「競馬の神様が降りてきた」というくらいの大激走でした。

松永幹夫騎手はこの後の12Rもフィールドルージュで制して1400勝に到達。ご本人も阪急杯の前に人気馬で負けてしまったため、1400勝は諦めていたというくらいですから、競馬は何が起きるかわかりません。そして競馬の神様に愛された騎手だったのだなと改めて思います。

 

2.無事これ名馬

大きなケガもなく2歳から10歳まで68戦を走り続け、引退後は誘導馬として活躍しました。重賞こそ阪急杯の1勝にとどまりましたが、短距離重賞やOPの常連として多くのレースに参戦していました。

重賞を47戦目に勝ちましたが、大きなケガもなく長く続けていれば良いことがあるという見本のように感じており、自分自身も頑張らなければという気にさせてくれます。

 

3.武家との深いかかわり

武宏平厩舎に所属し、生産牧場は師の弟が前の経営者であった武牧場でした。また、レースでは武幸四郎騎手を鞍上に迎えてデビューし、武豊騎手、武英智騎手も騎乗するなど武家と非常にかかわりの深い馬です。全レース武家というわけではありませんが、ここまでかかわりの深い馬も珍しいように思います。

 

 


競馬ランキング

ブラジルでリーディングサイアー~アグネスゴールド

 

プロフィール

アグネスゴールド

1998年4月10日 牡馬

父  サンデーサイレンス

母  エリザベスローズ

母父 ノーザンテースト

厩舎 長浜博之(栗)

7戦4勝

主な勝鞍 スプリングS(G2)、きさらぎ賞(G3)

 

競走生活

JRA

2歳:1戦1勝 新馬

3歳:6戦3勝 スプリングS(G2)、きさらぎ賞(G3)、若駒S(OP)

※年齢は当時は旧年齢ですが、現在の表記に合わせています。 

 

2歳暮れの新馬戦でデビューすると4角8番手から33秒9の末脚で初勝利を飾ります。

2戦目には格上挑戦で若駒S(OP)に参戦すると鞍上の河内洋騎手はイマイチの内容と言いながらも先行したダイイチダンヒルをきっちりと捕らえて連勝となります。

続くきさらぎ賞(G3)では、この後に皐月賞、ダービーでも2着となり、古馬になってから宝塚記念を勝つダンツフレームが先行して抜け出したものの、1頭だけ違う脚色で追い込んで初重賞制覇を飾ります。

さらにスプリングS(G2)はいつもよりも前目で競馬をしますが、秋にセントライト記念を勝つシンコウカリドを捉えて、重賞連勝、4戦無敗で皐月賞に向かうことになります。同一厩舎、同一馬主であるアグネスタキオンもここまで3戦無敗と話題を集めたものの右前脚の骨折が判明し、秋まで休養することになります。

神戸新聞杯(G2)で復帰しますが、後方のままエアエミネムの8着に敗れ、初黒星を喫します。続けて菊花賞(G1)に挑戦しますが、距離が長くマンハッタンカフェの8着に敗れます。

中距離路線に戻り、古馬と初対決となった鳴尾記念(G2)は先行してクビ、アタマ差の3着と結果を出し、復調を見せたものの再びケガで長期休養することになります。5歳の夏の札幌記念で復帰という話もありましたが、屈腱炎を発症し、引退となりました。

 

血統構成

サンデーサイレンスは現役時代はケンタッキーダービープリークネスSの2冠を制し、BCクラシックも制しています。引退後は日本で種牡馬入りし、日本の血統図を塗り替えてしまうほどの大種牡馬となります。3冠馬ディープインパクトをはじめ、多数のG1馬、重賞勝ち馬を輩出し、勝利数は現時点で歴代1位となっています。

エリザベスローズは現役時代は引退レースとなったセントウルS(当時はG3)を勝つなど5勝を挙げています。繁殖入り後は、本馬の他に弥生賞を勝ったフサイチゼノン、ダート重賞8勝のリミットレスビッドなど活躍馬を輩出しました。

母の父ノーザンテーストは日本の競馬史を変えた名種牡馬です。競走馬としてはフォレ賞などを制覇しています。種牡馬入り後は通算10回のリーディングサイアー、17年連続リーディングブルードメアサイアーに輝いています。主な産駒としてはダービー馬ダイナガリバー天皇賞アンバーシャダイシンボリルドルフを破ったギャロップダイナなど枚挙にいとまがありません。

 

私の注目ポイント

なぜ私がアグネスゴールドを取り上げたかをご紹介します。

1.皐月賞アグネスタキオンと甲乙つけがたい素質

無敗で皐月賞を制覇したアグネスタキオンとは厩舎、馬主、生産者、父、主戦騎手が同じでした。デビューもほぼ同じでアグネスタキオン新馬戦を勝った翌日に同馬も新馬戦を勝っています。

アグネスタキオンが次走でラジオたんぱ杯3歳S(G3)を制覇すると、同馬も若駒Sきさらぎ賞(G3)と連勝、さらにアグネスタキオン弥生賞(G2)を快勝したことで皐月賞(G1)では2頭の無敗対決となる予定でした。

主戦騎手だった河内洋騎手も甲乙つけがたい素質と評価したように、河内洋騎手がどちらの馬を選択するのかは注目されていましたが、残念ながら骨折により同馬が春のクラシックに参戦できず、過去に例を見ないであろう厩舎、馬主、生産者、父、主戦騎手が同じ無敗対決は夢と消えてしまいました。

 

2.強かったアグネス軍団

同馬の活躍した2000、2001年は馬主である渡辺孝男氏の馬が非常に走った時期でした。日本ダービーアグネスフライト皐月賞アグネスタキオン兄弟、海外G1を2勝したアグネスワールド、G1を6勝したアグネスデジタルとG1馬も複数登場し、他にも2歳OPを勝ったアグネスソニックや長距離で活躍したアグネスパートナーなど芝ダート、短距離・長距離問わず様々な条件で活躍馬がいました。

それぞれの馬が強い印象を与える勝利を挙げていたこともあり、レース内容とともに黄・赤袖・水色二本輪であるアグネスの勝負服が躍動していたことを思い出します。

また、常に活躍馬がいる金子真人氏を除けば、ここまで活躍馬が固まって登場したオーナーブリーダーではない個人馬主はあまり記憶がなく、馬運の強さに対して非常に驚きをもって見ていた記憶もあります。

 

3.ブラジルでリーディングサイアー

種牡馬入り後当初は日本にいましたが、4年目からは兄のフサイチゼノンもいるアメリカで、5年目からはブラジルで種牡馬生活を送っています。

日本でも兵庫ダービーを勝ったバンバンバンクなどを輩出していましたが、 ブラジルでは初年度産駒から重賞勝ち馬を出すなど活躍を続け、アメリカのG1シャドウェルターフマイルSを勝ったIvarをはじめ、ブラジル2冠牝馬マイスキーボニータ、ブラジルダービー馬アブダビなどG1を10勝以上勝利しています。直近でも19/20シーズンのリーディングサイアー、2歳リーディングサイアーに輝くなどブラジルで有力な種牡馬の一頭として活躍を続けています。

同馬の血脈が広がり、いつか日本でも同馬の血を継いだ馬が走る日が来てほしいと思っています。

 

 

 


競馬ランキング

菊花賞1番人気になった南半球産馬~ロックドゥカンブ

 

プロフィール

ロックドゥカンブ

2004年9月29日 牡馬

父  Red Ransom

母  Fairy Lights

母父 Fairy King

厩舎 堀宣行(美)

8戦4勝

主な勝鞍 セントライト記念(G2)、ラジオNIKKEI賞(G3)

 

競走生活

JRA

3歳:6戦4勝 新馬マカオJCT(500万下)、

4歳:5戦0勝

 

3歳3月にデビューすると1.9倍の人気に応え、2番手から抜け出して、後のエリザベス女王杯クィーンスプマンテを交わし、初勝利を飾ります。

2戦目のマカオJCTも重馬場ながら危なげなく勝利するとラジオNIKKEI賞(G3)に挑みます。1番人気こそクランエンブレムに譲りましたが、4角先頭から押し切り初重賞制覇を飾ります。2着は後にジャパンカップを勝つスクリーンヒーロー、11着は安田記念を勝つショウワモダンでした。この勝利により秋にオーストラリアで行われるヴィクトリアダービーに予備登録しますが、夏に流行した馬インフルエンザの影響もあり、断念することになりました。

つづくセントライト記念(G2)も先行して抜け出す強い競馬で勝利し、菊花賞(G1)を迎えます。ここまで無敗ということもあり、1番人気に推されましたが、後方からの競馬でアサクサキングスの3着に敗れてしまいました。

短期放牧後、有馬記念(G1)に出走しますが、マツリダゴッホの4着になり、再び休養に入ります。

半年休んだ初戦の目黒記念(G2)は先行して3着と好走し、宝塚記念(G1)に向かいます。2番人気に推され、先行して2番手からレースを進めますが、12着に終わります。レース後には岩田騎手がすぐに下馬し、検査したところ左後繋靭帯断裂が判明し、引退となりました。

 

 

血統構成

Red Ransomは、アメリカで3戦2勝と競走馬としては目立つ成績ではありませんでした。種牡馬入り後はドバイワールドカップElectrocutionistクイーンアンSIntikhabなど活躍馬を輩出し、オーストラリアでのシャトル種牡馬としても活躍しました。

母Fairy Lightsは、イギリスで走り未勝利でしたが、ニュージーランドで繁殖入りし、ニュージーランドのG2を2勝したKeyoraなどを輩出しています。母系を辿るとジャパンカップのビルサドスキー、エリザベス女王杯ファインモーション兄妹、阪神ジュベナイルフィリーズタムロチェリーなどもいる日本ともゆかりのある血統です。

母の父Fairy Kingは、大種牡馬Sadler's Wellsの全弟であり、競走馬としては未勝利でしたが、凱旋門賞HelissioジャパンカップFalbravなど活躍馬を輩出しました。

 

私の注目ポイント

なぜ私がロックドゥカンブを取り上げたかをご紹介します。

1.南半球産馬ながら菊花賞で1番人気

 

本馬はニュージーランドで産まれたため、日本で産まれた馬よりも半年程度遅れて産まれています。遅生まれのハンデがあるということから、JRAの規定でも2から4歳の途中までは斤量を1キロから4キロ軽くする措置があります。

遅生まれのハンデは大きいようで、日本であまり南半球産の馬が走っていないというのもありますが、南半球産馬が活躍するのは古馬になってからが多い印象です。高松宮記念連覇のキンシャサノキセキダービー卿CTのフィアーノロマーノも最初から高い素質を見せてはいたものの本格化は古馬になってからです。

しかし本馬は、デビューこそ遅かったものの新馬戦からセントライト記念まで4連勝するなど遅生まれのハンデをものともしない活躍を見せてくれました。下した相手も古馬になってからの活躍馬とはいえ、JCのスクリーンヒーロー安田記念ショウワモダンエリザベス女王杯クィーンスプマンテなど大物が含まれています。

ダービー2着アサクサキングスや朝日杯フューチュリティを制し、前哨戦の神戸新聞杯を勝ったドリームジャーニーなどもいましたが、無敗かつ高いレースセンスを踏まえ、菊花賞では1番人気に推されることになりました。個人的には、高い素質を買ってはいたものの、距離が長いだろうと思っていたため、1番人気には驚いた記憶があります。レースでは距離を意識してか後方からとなり、内から伸びて3着と敗れてしまいましたが、南半球産馬ということを考えると翌年が非常に楽しみになったなと思ったものです。

そのため、古馬になってからすぐにケガをしてしまったのが、残念でした。

 

2.堀厩舎初期の大物

 

堀厩舎と言えば、2冠馬ドゥラメンテ、G1を6勝したモーリスなど活躍馬を続々と輩出している厩舎ですが、まだこの頃は開業して5年目と中堅厩舎の1つだったように思います。

個人的には、本格化前のキンシャサノキセキ函館スプリントSビーナスラインなどで名前は知っていたものの一般的な厩舎の一つという印象でしたが、本馬が出てきたことで腕利きの調教師なのではと注目するようになりました。

本馬もRed Ransom産駒ですが、主流であるサンデーサイレンスディープインパクト産駒以外から活躍馬を出しているところに他の厩舎とは違う魅力を感じています。

 

3.吉田和美オーナーの馬

 

吉田和美オーナーは吉田勝己ノーザンファーム代表の奥様ですが、所有馬は外国産馬、セールでの購入馬、諸事情でクラブ募集やセリに上場できなかった馬が中心です。

しかし、さすがノーザンファームが選んだ馬、生産した馬であるだけにあまり日本ではメジャーではない血統の馬でも活躍しています。本馬は最初の頃の所有馬の1頭であり、南半球で大活躍しているRed Ransom産駒までウォッチしているのかと驚くとともに、義理の母にあたる吉田和子オーナー同様に数は少なくても侮れない馬を所有しているなと思った記憶があります。

その後は、吉田和美オーナーの所有馬であれば、知らない血統であっても注目して見るようになりました。

 

 

 

 


競馬ランキング