懐かしのマイナー馬たち

懐かしの競走馬たち

あまり取り上げられることのない思い出の競走馬をきままに語ります。

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息の長い活躍をした名スプリンター~パドトロワ

 

プロフィール

パドトロワ

2007年4月20日 牡馬

父  スウェプトオーヴァーボード

母  グランパドドゥ

母父 フジキセキ

厩舎 鮫島一歩(栗)

35戦9勝

主な勝鞍 アイビスサマーダッシュ(G3)、キーンランドC(G3)、函館スプリントS(G3)

 

競走生活

JRA

2歳:2戦1勝 未勝利

3歳:7戦2勝 さくらんぼ特別(1000万下)、500万下

4歳:8戦3勝 オーストラリアT(OP)、UHB杯(OP)、心斎橋S(1600万下)、スプリンターズS(G1)2着

5歳:7戦2勝 アイビスサマーダッシュ(G3)、キーンランドC(G3)

6歳:5戦1勝 函館スプリントS(G3)

7歳:6戦0勝

 

2歳秋の新馬戦を3着でデビューし、2戦目の未勝利戦を逃げ切って初勝利を挙げます。

3歳になり500万下を2戦目に勝ち上がると、橘S(OP)で3着と好走し、NHKマイルC(G1)に挑みますが16着に大敗してしまいます。芝1600mだった新馬戦も3着ながら1秒3差であったように1600mは長いと判断され、8歳時にダ1200mの東京スプリント(G3)や芝1800mのエプソムC(G3)に挑むまでは一貫して芝1400m以下のレースを使うことになります。

次走のさくらんぼ特別(1000万下)を1番人気に応え、早め先頭から勝利し、準オープンに昇級し、休養にはいります。秋の準オープンでは好勝負に持ち込むも道頓堀S(1600万下)6着、桂川S(1600万下)3着と勝ちきれず、再び休養にはいります。

4歳になり、2戦目の心斎橋S(1600万下)を勝ち上がると、続くオーストラリアT(OP)で接戦をものにし、オープン初勝利を挙げます。2か月休養した函館スプリントS(G3)は6着となりますが、UHB杯は1番人気に応え、逃げ切って勝利し、本格化を窺わせます。キーンランドC(G3)をタイム差なしの3着と好走するとスプリンターズS(G1)に参戦します。9番人気と人気はありませんでしたが、4角先頭から逃げ込みを図り、あわやの場面を演出し、カレンチャンの2着と激走します。さらに香港スプリント(G1)にも参戦し、この年を終えます。

5歳を迎え、春雷S(OP)7着、福島民友C(OP)6着、函館スプリントS(G3)4着とタイム差は0秒4から6差とあまりないものの馬券に絡むことができませんでした。つづくアイビスサマーダッシュ(G3)は7番人気に人気は下がってしまいますが、外枠から押し切り重賞初制覇を飾ります。さらにキーンランドC(G3)も逃げて接戦をものにし、重賞連勝となりました。迎えたスプリンターズS(G1)は4番人気に推されますが、ロードカナロアのレコード勝ちの前に8着となります。暮れに京阪杯(G3)に参戦しますが、15着となり、鞍上の安藤勝己騎手はこのレースで馬を動かせなかったとして、騎手引退を決意することになりました。

6歳になり、半年ぶりの京王杯スプリングS(G2)は14着に敗れますが、2戦目の函館スプリントS(G3)はこれまで同様に2戦目の変わり身を見せ、2番手から逃げ馬を捉えて重賞3勝目を飾ります。しかし、このレース以降は、ダ1200mの東京スプリント(G3)や芝1800mのエプソムC(G3)にも参戦するなど陣営も試行錯誤しましたが、2桁着順が続き、7歳の夏で引退となりました。

血統構成

スウェプトオーヴァーボードアメリカで走り、メトロポリタンHなどG1を2勝しています。種牡馬入り後は、その父エンドスウィープの後継として輸入され、スプリンターズS2勝のレッドファルクス東京大賞典2勝、帝王賞のオメガパフュームなどを輩出しています。

母グランパドドゥは中日新聞杯忘れな草賞を制した中距離馬でした。繁殖入り後は本馬の他には2勝したキングドラゴンを輩出しています。

母の父フジキセキは大種牡馬サンデーサイレンスの初年度産駒として朝日杯3歳Sを制し、弥生賞も制して3冠の期待が高かったものの屈腱炎で引退となりました。種牡馬入り後はダートG1を7勝したカネヒキリ、G1を3勝したストレイトガール皐月賞イスラボニータなど多くの活躍馬を輩出しました。

 

私の注目ポイント

なぜ私がパドトロワを取り上げたかをご紹介します。

1.人気薄でのスプリンターズS2着や重賞3勝

5歳のスプリンターズSで9番人気ながら2着とあわやの場面を見せましたが、非常に驚いた記憶があります。2走前のUHB杯は逃げて強い内容でしたが、まだ重賞は敷居が高いのではないかと思っていただけに、思っている以上に強い馬なのかもしれないと思うようになりました。

しかしながらその後凡走が続いていたため、フロックだったのかもと思っていたアイビスサマーダッシュで7番人気ながら重賞初制覇。さらに直線1000mは特殊であり、たまたまかと思っていた次走のキーンランドCも3番人気で重賞を連勝しました。

さらに7歳になり衰えたかと思えた函館スプリントSを6番人気で制しています。

個人的には予想との相性が悪かったですが、激走されてもパドトロワなら仕方ないかと思った記憶があります。

 

2.パワフルなレースぶりの母系

母母母のベリアーニはRisen Starの子を宿して輸入され、母母であるスターバレリーナを産んでいます。スターバレリーナローズSを制し、エリザベス女王杯では3冠がかかったベガを差し置いて1番人気に推されました。Risen Starアメリカ2冠馬でSecretariat×His Majestyと中距離色が強く、スターバレリーナも中距離での活躍が目立っていました。

母のグランパドドゥも短距離よりの産駒が多いフジキセキ産駒ながら、中日新聞杯忘れな草賞を制するなど中距離で活躍しました。

ベリアーニの一族からは先行して粘ってオークス3着となったオリーブクラウンやスプリンターながら斬れるというよりもズンズンと差してくるアグネスラズベリ東海Sを勝ったアンドゥオールを輩出しています。

本馬も力強く先行して粘るというところは、この一族という感じがいたしましたが、アイビスサマーダッシュを勝ち、キーンランドCでレコード勝ちするなど、母系の特徴は残しつつも種牡馬のよいところも引き出すという血統かと考えています。

3歳下の従弟にあたるロゴタイプローエングリンのスピードを受けつぎ、先行して粘るというレースぶりでG1を3勝しています。

 

3.エンドスウィープスウェプトオーヴァーボードの後継種牡馬

エンドスウィープフォーティナイナーの後継としてサウスヴィグラスラインクラフトといった短距離馬だけではなく、スイープトウショウアドマイヤムーンなどの中距離馬も出した名種牡馬でしたが、11歳と早世してしまいました。

その後継としてアメリカで走っていたスウェプトオーヴァーボードが輸入されました。父エンドスウィープ同様にスプリンターズS2勝のレッドファルクスや本馬のような短距離馬だけではなく、東京大賞典2勝、帝王賞のオメガパフュームやステイヤーズSのリッジマンといった中・長距離馬を輩出しています。

本馬も2頭の後継として年間48から68頭の種付けを実施するなど人気を得ています。 現在地方競馬と合わせて5連勝したダンシングプリンスなどの活躍が期待されます。

 

 

 

 


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今も残る衝撃の新潟芝2000mの基準タイム~ツジノワンダー

 

プロフィール

ツジノワンダー

1996年6月19日 牡馬

父  メジロマックイーン

母  ツジノチドリ

母父 マルゼンスキー

厩舎 清水美波(美)→ 室井康雄(栃)

42戦6勝

主な勝鞍 NiLS21S(1600万下)、アイルランドT(1600万下)

 

競走生活

JRA

3歳:4戦1勝 新馬

4歳:10戦3勝 松島特別(900万下)、稲村ヶ崎特別(900万下)、500万下

5歳:8戦1勝 NiLS21S(1600万下)

6歳:8戦1勝 アイルランドT(1600万下)

7歳:5戦0勝

・栃木(宇都宮)

8歳:7戦0勝

※年齢は当時は旧年齢ですが、現在の表記に合わせています。

 

3歳2月のダート1400の新馬戦でデビューすると1番人気に応え、4馬身差で圧勝のデビューを飾ります。その後、7戦ダート戦のみを使われ、地方の交流レースにも出走しますが、すべて4着以下に敗れてしまいます。

9戦目に初めて芝のレースを使われると中団から伸びて快勝します。返す刀で稲村ケ崎特別(900万下)も3馬身半差で連勝となります。続くジューンS(1600万下)も3着と好走します。直後に降級となりますが、2戦目で松島特別(900万下)を勝利し、再び準オープンに昇級します。続けて新潟記念(G3)に挑戦すると準オープンの身ながら2番人気に推され、0秒6差の5着と好走します。

この後、6か月半休養となり、2戦した後、再び3か月休養にはいります。

そして迎えたNiLS21S(1600万下)。この日から新潟競馬場がリニューアルオープンし、右回りから左回りに変更となり、直線1000mの芝コースも新設されました。天候も良く、下級条件でもかなり早いタイムが出ていました。ロードブレーブが前半1000mを57秒6で逃げ、これを2番手集団でマークし、直線並びかけます。ロードブレーブも差し返すように粘り、新装新潟の長い直線を叩き合い、最後は凌いで先着し、表示されたタイムが1分56秒4という日本レコードでした。

続く天の川S(1600万下)も3着と好走し、新潟記念カブトヤマ記念新潟競馬場の重賞でも期待されますが、2桁着順に敗れてしまいました。その後、暮れの市川S(1600万下)で2着に入りますが、他の4戦は5着以下となってしまいました。

しかし、NiLS21Sからちょうど一年後の夏の新潟では、人気薄ながらマグナーテンがレコードで快勝する中、3着と好走し、新潟競馬場との相性の良さを見せます。関屋記念(G3)は11着でしたが、朱鷺S(1600万下)は5着に入り、秋の中山でおこなわれたアイルランドT(1600万下)で久しぶりの勝利を挙げました。

オープンに昇級したものの6戦続けて2桁着順となり、北関東に移籍しましたが、勝利を挙げることができずに引退しています。

 

血統構成

メジロマックイーン天皇賞・春2回、菊花賞を制した名ステイヤーです。特に天皇賞・春は父子3代での天皇賞制覇となっています。種牡馬入り後はホクトスルタンディアジーナなどの重賞勝ち馬を輩出しています。また、母の父としても3冠馬オルフェーヴル、6冠馬ゴールドシップ、グランプリ2勝のドリームジャーニーなどを輩出しています。

母ツジノチドリはJRAで3勝を挙げています。繁殖入り後は2歳時に重賞でも好走したサワノフラッシュ、セントライト記念で1番人気に推されたテイオージャなどを輩出しています。

母の父マルゼンスキーニジンスキーの持ち込み馬として、朝日杯3歳Sを大差で制しています。しかも8戦8勝と無敗のまま競走馬を過ごしました。種牡馬入り後はダービーのサクラチヨノオー菊花賞ホリスキーレオダーバンなどを輩出し、母の父としてもライスシャワーウイニングチケットスペシャルウィークなどのG1馬を輩出しています。

 

私の注目ポイント

なぜ私がツジノワンダーを取り上げたかをご紹介します。

1.衝撃の芝2000mの基準タイム

1分56秒4。このタイムを見たときには正直目を疑いました。57秒台すらかなり破格のタイムであった当時において、新装の開幕週とはいえ、準オープンのレースでここまでのタイムが出るとは想像できませんでした。

スタートから大逃げをすることで有名だったロードブレーブが前半1000mを57秒6で逃げ、それをぴったりとマークする形の2番手で本馬はレースを進め、直線競り勝って達成したものでした。

最下位8着の馬ですら1分58秒0でしたので、とんでもないスピード馬場ができたものだと思ったものです。

その後、2011年の天皇賞・秋トーセンジョーダンが破るまで日本レコードとして君臨していました。新潟競馬場では2020年現在いまだに基準タイムとして残っており、改修がない限りは破られることはないのではないでしょうか。

 

2.父、母父から受け継いだ持続するスピード

メジロマックイーンステイヤーでしたが、 レコードを3回記録し、特に引退レースとなった京都大賞典は2分22秒7という破格のタイムでの勝利でした。古馬以降に騎乗した武豊騎手がマイルG1でも勝負になったはずと発言しているようにスタミナだけではなく、スピードも兼ね備えた馬でした。

母父マルゼンスキースーパーカーと称された馬で朝日杯3歳Sで1分34秒4という2歳レコードで制しています。脚元の不安もあり、全力で追えないこともありましたが、ほぼすべてのレースで主導権を握り、8戦でつけた着差は合計61馬身とスピードの違いを見せつけています。

両馬から受け継いだ持続するスピードが開幕週の馬場ともマッチして、1分56秒台という驚愕のレコードが出たのではないかと個人的には思っています。

他にも新潟芝1400mのNSTOPで今も残るレコード決着の中で3着、中山のアイルランドTで好タイムで勝利とキレよりも長く良い脚を求められるレースで好走しています。

 

3.日本の競馬を支えてきた母系の種牡馬

母系を辿っていくとマルゼンスキーセントクレスピン、ヒンドスタン、ハクリユウ、ペリオンと各世代の有力種牡馬が重ねられています。

ペリオンはリーディングサイアーにも輝き、産駒が帝室御賞典(後の天皇賞)を6勝挙げています。

ハクリュウは競走馬として帝室御賞典、 各内国産古馬連合(後の天皇賞)を勝利しています。種牡馬としても帝室御賞典、京都農林省賞典四歳呼馬を買ったマルタケなどを輩出しています。

ヒンドスタンはリーディングサイアーに7度輝き、3冠馬シンザンやダービーのハクシヨウ、天皇賞のヤマニンモアー、リユウフオーレル、ヒカルポーラ、ヤマトキヨウダイなど大成功を収めています。

セントクレスピンは競走馬として凱旋門賞を制し、種牡馬としても英2冠牝馬Altesse Royaleや天皇賞エリモジョージタイテエムなどを輩出しています。

このように各世代の有力種牡馬を種付けし、6代も日本で代を重ねているというのはかなり少ないように思います。それだけこの血統に愛着を持ち、常に強く速い馬を産み出そうとする生産者の思いが見える気がいたします。

 

 

 

 


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Gone West の半弟~ロードアルティマ

 

プロフィール

ロードアルティマ

2000年1月23日 牡馬

父  Seeking the Gold

母  Secrettame

母父 Secretariat

厩舎 山内研二(栗)

12戦6勝

主な勝鞍 札幌日刊スポーツ杯(1600万下)

 

競走生活

JRA

2歳:1戦1勝 新馬

3歳:1戦0勝

5歳:3戦2勝 戎橋特別(500万下)、500万下

6歳:6戦3勝 札幌日刊スポーツ杯(1600万下)、秋川特別(1000万下)、祇園特別(1000万下)

7歳:1戦0勝

 

山内厩舎らしく2歳の7月にデビューすると1.1倍の圧倒的1番人気に応え、0秒5差でデビュー戦を飾ります。

その後、故障を発症してしまい、次走は3歳の9月となりますが、後方のままで7着に敗れます。

再び休養に入り、復活したのは5歳の5月となりました。初芝となった500万下を勝利すると、つづく戎橋特別(500万下)も快勝します。昇級戦となった文月特別(1000万下)でタイム差なしの3着と好走しますが、再び休養に入ります。

6歳の4月に戻ると初戦こそ敗れたものの、つづく1000万下の特別(祇園特別、秋川特別)と連勝します。昇級後も3着を挟み、札幌日刊スポーツ杯(1600万下)を快勝し、オープンに上がりました。

初重賞挑戦となったセントウルS(G2)では3番人気に推されるも久々の1200m戦ということもあってか後方ままとなり、敗れます。

再び故障を発症し、休養に入ります。7歳11月に復帰するも大敗してしまい、引退となりました。

 

 

血統構成

Seeking the Goldアメリカで走り、スーパーダービー、ドワイヤーSとG1を2勝し、BCクラシックでも2着となっています。種牡馬入り後はドバイワールドCDubai Millennium、G1を8勝したHeavenly Prizeなどを輩出し、日本でも日本調教馬での海外G1初制覇を果たしたシーキングザパールスプリンターズSタイキシャトルに勝ったマイネルラヴなどを輩出しています。

母Secrettameはマンノウォー系の名種牡馬Known Factの妹として産まれ、アメリカで10戦6勝し、G2のガゼルHでも2着となっています。繁殖入り後はドワイヤーSを勝ち、種牡馬としてもZafonicやCame Homeなどを輩出したGone Westをはじめ、CrimpleneやG1を8勝したApache Catの父Lion Cavernなど本馬を含め10頭もの種牡馬を輩出しています。また、孫の代からもサクラオリオンなどが出ています。

母の父Secretariatアメリ3冠馬で3冠すべて今も残るレコード勝ちを収めた名馬です。種牡馬入り後はBCディスタフのLady's Secret、2冠馬Risen Starを輩出しています。母の父としてもStorm CatA.P. IndyGone WestSummer Squallなどの活躍馬、名種牡馬を輩出しています。

 

私の注目ポイント

なぜ私がロードアルティマを取り上げたかをご紹介します。

1.ケガがちながらも5歳、6歳での充実ぶり

2歳の新馬を圧勝した際は、これは強い馬が現れたと感じたものの、そのまま休養に入り、残念と思ったものでした。3歳の夏に復帰し、7着に敗れ、再度休養に入ったときは、正直もう引退かなと思ったものです。

それが5歳4月に復活して、連勝、さらに休みを挟んで3勝を挙げ、セントウルSに駒を進めました。2歳のダート1000mを圧勝した馬が、途中1走はしているものの3年近く間を開けて復活するというのは、あまり記憶がありません。

ケガがなければどれくらいの結果を見せてくれたのだろうかと考えてしまいます。

 

2.世界的な良血

Seeking the GoldDubai Millenniumなどマイル戦を中心に活躍した名種牡馬であり、 母の父Secretariatアメリ3冠馬BMSとしてStorm CatA.P. Indyなどを輩出しているという良血です。

また、本馬の兄弟には名種牡馬Gone West、Lion Cavernを始めに種牡馬が10頭、おじにマンノウォー系の名種牡馬Known Fact、G1馬Tentam、近親にG1馬Tappiano、初代NHKマイルC覇者タイキフォーチュンと名馬が数多く並んでいます。

クラブ馬では高値の1億円以上での募集になり、さらに引退後に種牡馬入りできたのもこの良血が大きな期待を抱かせたからではないでしょうか。現役時代にも海外から種牡馬のオファーがあったということでもあり、それだけの良血と言えるかと思います。

 

3.種牡馬での活躍

種牡馬入り後はあまり実績がないことから初年度から5頭、3頭、1頭、3頭と少ない産駒しかいませんでしたが、 5頭の初年度産駒から3頭が中央でデビューし、うち2頭が2歳戦で勝ち上がり、重賞にも駒を進めました。

すると5年目は過去最高の63頭に種付けし、53頭の産駒が産まれています。うち51頭がデビューし、36頭が勝ち上がるハイアベレージを記録しています。その中には2020年時点でも活躍しているタイムトリップやヒロイックアゲンといった代表産駒も含まれています。

これも良血のなせる業という感じでしょうか。20歳になり、種付け頭数は減っては来ていますが、中央の重賞を勝てる馬の出現に期待したいものです。

 

 


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ニホンピロウイナー産駒の快速馬~ダンディコマンド

 

プロフィール

ダンディコマンド

1993年4月12日 牡馬

父  ニホンピロウイナー

母  ダイナスワップ

母父 ノーザンテースト

厩舎 福島信晴(栗)→井上孝彦(笠)→佐々木一夫(北)

13戦5勝

主な勝鞍 北九州記念(G3)、クロッカスS(OP)

 

競走生活

JRA

3歳:6戦3勝 新馬、萌黄賞(500万下)、クロッカスS(OP)

4歳:3戦2勝 北九州記念(G3)、雲仙特別(900万下)

5歳:2戦0勝

6歳:1戦0勝

・北海道

8歳:1戦0勝

※年齢は当時は旧年齢ですが、現在の表記に合わせています。

 

 

年明けの小倉の新馬戦でデビューすると芝1200m戦とはいえ、スタートから33秒6で逃げつつ、上がりも最速と圧巻のデビューを飾ります。

2戦目の萌黄賞もデビュー戦よりも強い内容で、着差もさらに広げ1秒5差の圧勝を遂げます。さらにクロッカスSは芝1600mの距離延長をものともせず、4角先頭から快勝します。

スプリングSは2番人気に推されますが、後方から良く伸びて4着となります。皐月賞は距離不安から6番人気となりますが、先行して5着に粘ります。NHKマイルCでの好走も期待されましたが、骨折してしまい、冬まで休むことになります。

復帰戦のクリスマスSはタイム差なしの2着となりましたが、再び骨折してしまい、休養に入ります。

4歳夏に復帰すると900万下の雲仙特別は格の違いを見せて快勝します。返す刀で連闘で芝1800mの北九州記念に向かいます。1番人気に推されるとレコードタイムで逃げ切り初重賞制覇を飾ります。ちなみに2着は従弟にあたるパルスビートでした。

つづく京王杯AHも圧倒的1番人気に推されますが、9着に敗れると再び骨折で休養に入ります。

その後はレースを使っては休養となってしまい、門別のレースを最後に引退、種牡馬入りとなりました。

 

 

血統構成

ニホンピロウイナーは名短距離馬であり、中長距離が主流の時代に短距離、マイル戦が注目されるようになるきっかけを作った馬です。マイルチャンピオンシップ連覇、安田記念を制し、3年連続で最優秀スプリンターに選出されています。種牡馬入り後は安田記念連覇、天皇賞秋のヤマニンゼファー高松宮杯スプリンターズSのフラワーパークなどを輩出しています。

母ダイナスワップスは中央競馬で3勝し、繁殖入りすると本馬の他に3勝したサクラビックオーなどを輩出しています。子孫からは重賞3勝のマイネルラクリマチューリップ賞を勝ったクロフネサプライズなども出ています。

母の父ノーザンテーストは日本の競馬史を変えた名種牡馬です。競走馬としてはフォレ賞などを制覇しています。種牡馬入り後は通算10回のリーディングサイアー、17年連続リーディングブルードメアサイアーに輝いています。主な産駒としてはダービー馬ダイナガリバー天皇賞アンバーシャダイシンボリルドルフを破ったギャロップダイナなど枚挙にいとまがありません。

 

私の注目ポイント

なぜ私がダンディコマンドを取り上げたかをご紹介します。

1.デビューから3連勝した時の快速ぶり

本馬はPOGで友人が選んでいた馬でデビュー時から注目はしていました。冬の小倉の新馬戦を1分8秒台という好タイムで圧勝したことで、これは速い馬が現れたなと感じていました。マイルのクロッカスSを勝った時には意外と距離の融通も利くのだなくらいに感じていたのですが、友人は中距離も問題はないと言っていました。

半信半疑でスプリングS皐月賞を見ていたのですが、私の予想以上に好走し、この年から始まったNHKマイルCは持っていかれるなと感じたものでした。残念ながら骨折してしまい、参戦はかなわなかったのですが、1分32秒6という当時としては速いレースでどういう走りを見せてくれたのかは見てみたかった気がいたします。

 

2.4歳夏の復活と複数回の骨折

残念ながら複数回の骨折もあり、順調に使えなかった本馬でしたが、4歳夏に復活します。休養中に900万下まで降級していましたが、芝1200の雲仙特別を快勝すると、連闘でG3の北九州記念に挑みます。ケガ勝ちで連闘、芝1800への延長など不安要素が多い一戦でやや不安な感じで見ていましたが、逃げてレコード勝ちと非常に強い競馬を見せてくれました。

この時に友人の中距離も問題ないという発言に得心が行ったものです。

これは秋が楽しみと思いましたが、京王杯AHでの不可解な敗戦後に再び骨折になってしまい、非常に残念に思ったものです。その後も骨折などの不安が続き、順調に使えなかったのは残念でした。

 

3.ニホンピロウイナーのサイアーライン

現役時代のスピードが評価され、種牡馬入りすると少ない産駒からひまわり賞を勝ち、桜花賞にも駒を進めたミッキーコマンドなどを輩出しました。

ニホンピロウイナーという日本を代表する稀代の快速馬のサイアーラインをつないでほしいと願っておりましたが、残念ながら2011年に亡くなってしまい、かないませんでした。2010年には九州に移籍し、種付け頭数も増え、活躍が期待された矢先のことでした。

ニホンピロウイナーの系統は、現時点ではエムオーウイナー産駒がわずかに残る程度になってしまっています。

 

 

 


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ハッピースプリントの父~アッミラーレ

 

プロフィール

アッミラーレ

1997年4月1日 牡馬

父  サンデーサイレンス

母  ダジルミージョリエ

母父 Carr de Naskra

厩舎 鈴木康弘(美)

18戦6勝

主な勝鞍 欅S(OP)、春待月S(OP)

 

競走生活

JRA

3歳:2戦1勝 未勝利

4歳:7戦5勝 欅S(OP)、春待月S(OP)、みちのくS(1600万下)など

5歳:5戦0勝

6歳:4戦0勝

※年齢は当時は旧年齢ですが、現在の表記に合わせています。

 

脚元の不安などもあり、デビューは3歳夏の札幌の未勝利戦となりました。既走馬相手に圧倒的1番人気に推されると先行策から抜け出し、快勝します。 

続く美唄特別(500万下)でも1倍台の1番人気に推されますが、後方からの競馬となり、11着と大敗してしまいます。

その後、長期休養に入り、4歳の2月に復帰すると500万下、伊良湖特別(900万下)、みちのくS(1600万下)を逃げ切り、先行抜け出し、捲りと様々なパターンで圧勝の3連勝を飾ります。

オープン初挑戦となった欅Sは初のダ1400m戦でしたが、1番人気に推されるとサウスヴィグラスやビーチフラッグらを抑え、2着クロッサンドラに2馬身差で快勝します。

夏はマリーンS、エルムS(G3)と北海道で走りますが、エンゲルグレーセの前に8着、4着と敗れます。

再び休養に入り、年末に復帰するとダ2300mの春待月Sを向正面で捲り快勝します。

5歳になり、初の芝となる中山金杯で11着と敗れます。再びダートに戻った根岸Sでは1番人気となりますが、サウスヴィグラスに雪辱され4着となります。

その後は得意のダ1700mだけではなく、1200m前後の短い距離や芝戦も使われますが、それまでの強さはなく、6歳秋に引退となりました。

 

血統構成

サンデーサイレンス現役時代はケンタッキーダービープリークネスSの2冠を制し、BCクラシックも制しています。引退後は日本で種牡馬入りし、日本の血統図を塗り替えてしまうほどの大種牡馬となります。3冠馬ディープインパクトをはじめ、多数のG1馬、重賞勝ち馬を輩出し、勝利数は現時点で歴代1位となっています。

母ダジルミージョリエはアメリカで走りG2レアパフュームSを勝ち、G1エイコーンSで3着するなど7勝を挙げました。繁殖入り後は本馬の他に京都ハイジャンプで3着したマルブツエルハーブなどを輩出しています。

母の父Carr de NaskraはトラヴァーズSを制し、他にもG1で4回2着しています。種牡馬入り後は、本馬の母ダジルミージョリエの他にもBCクラシック2着のL'carriere、G2レムゼンSを勝ったTropicoolなどを輩出しています。

 

私の注目ポイント

なぜ私がアッミラーレを取り上げたかをご紹介します。

1.サンデーサイレンス産駒初期のダート活躍馬

サンデーサイレンスゴールドアリュールというG1馬を輩出していますが、基本的には芝向きの馬が多く、特に初期はその傾向が顕著であったように感じています。本馬が出るまでにダートのオープンクラスを勝ったのはすばるSのタガノサイレンスや地方交流重賞を勝ったイシノサンデーくらいしかいませんでした。

そのような中、デビューは遅れたものの6戦5勝で一気にオープンの欅Sを勝った時はついにダートの大物誕生かと思ったものです。残念ながら脚元などの不安もあり、その後はオープンを1勝するに留まりましたが、連勝時の強さは目を見張るものがありました。

 

2.距離不問、展開不問の安定感

当初はダート1700mを連続して使われ、先行しての抜け出しが得意戦法ではありましたが、みちのくSや春待月Sでは向正面から捲っての圧勝、欅Sでは中団からの抜け出しと様々な戦法での勝ち方を見せてくれました。

距離についても初のダート1400mとなった欅S、初のダート2300mとなった春待月Sを快勝するなど距離不問でスピード、スタミナを兼ね備えた競走馬でした。

 

3.予想外の種牡馬入りとシンジケート結成

ダートのオープンを2勝しただけのため、種牡馬入りは厳しいと思っていましたが、個人所有ながら引退後は種牡馬として登録されました。

当初は20頭前後でしたが、産駒の評判が高く、3年目にはシンジケートが結成されました。途中からシンジケートが組まれるケースは少ないため、かなり評判が高かったものと思われます。それを裏付けるかのように少ない産駒数ながらもクイーン賞3着のサクラサクラサクラ、さきたま盃2着のトキノエクセレント、関東オークス2着のミスミランダーといった地方競馬を中心に活躍馬を輩出します。その中でも代表産駒と言えるのが、G1の全日本2歳優駿を勝ち、南関東3冠にあと一歩と迫ったハッピースプリントではないかと思います。

本馬はPOGで持っていた馬でしたが、このようなチャンピオンホースを輩出し、いまだに現役種牡馬として活躍を続けていることには非常に感慨深いものがあります。

 

 

 


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タガノテイオー

 

プロフィール

タガノテイオー

1998年4月10日 牡馬

父  サンデーサイレンス

母  カフェドフランス

母父 Danzig

厩舎 松田博資(栗)

5戦2勝

主な勝鞍 東京スポーツ杯3歳S(G3)、朝日杯3歳S(G1)2着

 

競走生活

JRA

2歳:5戦2勝 未勝利、東京スポーツ杯3歳S(G3)、朝日杯3歳S(G1)2着

※年齢は当時は旧年齢ですが、現在の表記に合わせています。

 

夏の札幌で後に伝説の新馬戦とも言われるようになる新馬戦でデビューします。1番人気に推されましたが、のちにダービー、ジャパンカップを勝つジャングルポケットを追い詰めるものの2着に敗れてしまいました。

折り返しの新馬戦はきっちりと抜け出して初勝利を飾ります。

3戦目には札幌3歳Sに出走し、500万下を圧勝してきたのちのG1 3勝馬テイエムオーシャンダリア賞を勝ってきたマイネルカーネギーに人気は譲りますが、これまでと同じような勝負所で先団に取り付くレースをしましたが、今度は後ろから差される形で再びジャングルポケットに敗れ、2着となります。

続いて東京スポーツ杯3歳Sに出走します。1番人気には初勝利をオープンのクローバー賞で挙げたウインラディウス、2番人気は新馬戦が強い内容だったグラスミライでしたが、逃げるヒマラヤンブルーをきっちりと捕らえ、初重賞制覇を飾ります。

そして、朝日杯3歳Sに向かいます。距離短縮で初の1600m戦となりましたが、ここまでのレースぶりから1番人気に推されます。レースもこれまで同様に抜け出しては来ましたが、いつもほどの伸びがなく、メジロベイリーに差し返され、2着に敗れます。最後の直線で左後脚が骨折しており、残念ながら予後不良となってしまいました。 

 

血統構成

サンデーサイレンス現役時代はケンタッキーダービープリークネスSの2冠を制し、BCクラシックも制しています。引退後は日本で種牡馬入りし、日本の血統図を塗り替えてしまうほどの大種牡馬となります。3冠馬ディープインパクトをはじめ、多数のG1馬、重賞勝ち馬を輩出し、勝利数は現時点で歴代1位となっています。

母カフェドフランスは未出走で繁殖入りし、本馬以外には2頭の牝馬を産んでいます。ひ孫にあたるタガノグランパファルコンSを制しています。

母の父Danzigは競走馬としては脚元の不安があり、一般戦のみの3戦3勝でしたが、種牡馬としては、大種牡馬ノーザンダンサーの最高の後継種牡馬の1頭に挙げられる大活躍をします。初年度からエクリプス賞最優秀2歳牡馬Chief's Crownを輩出し、その後もベルモントSDanzig Connection、プリークネスSのPine Bluff等のダートの活躍馬、BCマイル連覇のLure、BCマイルのWar Chant等の芝の活躍馬を輩出します。アメリカ国外でも愛2000ギニーのShaadi、ジュライCGreen Desert等の活躍馬を輩出しています。日本でも阪神3歳牝馬Sヤマニンパラダイス、アベイユドロンシャンのアグネスワールド等を輩出しています。また、Green DesertDanehill等の後継種牡馬も大活躍し、Danzig系と呼ばれるまでになっています。

 

私の注目ポイント

なぜ私がタガノテイオーを取り上げたかをご紹介します。

1.伝説の新馬戦で1番人気

8頭立てだった新馬戦は8頭すべてが勝ち上がるという伝説の新馬戦の一つに挙げられています。メンバーもダービー、ジャパンカップを勝ったジャングルポケット朝日杯3歳Sメジロベイリー若葉Sのダイイチダンヒルなど後にもかなりの活躍をしている馬が出走していました。

戦前も天皇賞メジロブライトの弟メジロベイリー牝馬ながらケンタッキーダービーを勝ったWinning Colorsの孫でTheatrical産駒のドラマチックローズ、重賞5勝でサマーサスピションローゼンカバリーを輩出したダイナフェアリーの孫で名門伊藤雄二厩舎のダイイチダンヒルといった良血馬が揃ってはいましたが、それらを抑えて本馬が1番人気に推されました。

レースこそ先行したジャングルポケットに敗れてしまいましたが、この2頭は覚えておかなければと思った記憶があります。

ちなみに折り返しの新馬戦には敗れた7頭のうち6頭が出走し、1着から6着までを占めました。6着から7着の間には9馬身もの大差がついており、いかにこの新馬戦のレベルが高かったを物語っているかと思います。

 

2.レースセンスの高い走り

新馬札幌3歳Sジャングルポケットの2着と敗れてしまいましたが、力でねじ伏せる感じのするジャングルポケットに対し、勝負所で先団に取り付ききっちりと抜け出してくる様が安心して見ていられました。私自身、5レースとも本命視しており、安心してレースを見ていられた記憶があります。

最後となった朝日杯3歳Sこそいつもの伸びがないなと見ていましたが、そこまでのレースぶりはさすがで、「まともならぶっちぎっていた」とコメントした藤田騎手ではないですが、故障がなければ勝っていたとしてもおかしくはない内容だったように思います。

クラシック戦線でも楽しみと見ていただけにアグネスタキオンクロフネといった名馬との対戦も見てみたかった気がいたします。 

 

3.藤田騎手も最強馬に挙げる能力の高さ

主戦であった藤田伸二騎手も自分が乗った中では最強馬と語るほどです。藤田伸二騎手と言えばダービー馬フサイチコンコルド有馬記念シルクジャスティスなど数多くの名馬に騎乗しており、その中でも最強というほどですから、かなり期待していたことは想像に難くありません。それだけに朝日杯3歳Sでの故障が残念でなりません。

 

 

 


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孫は無敗2冠馬デアリングタクト~デアリングハート

 

プロフィール

デアリングハート

2002年3月9日 牝馬

父  サンデーサイレンス

母  デアリングダンジグ

母父 Danzig

厩舎 藤原英昭(栗)

26戦4勝

主な勝鞍 府中牝馬S(G3)2回、クイーンS(G3)、NHKマイルC(G1)2着、桜花賞(G1)3着、ヴィクトリアマイル(G1)3着

 

競走生活

JRA

2歳:3戦1勝 未勝利

3歳:8戦0勝 NHKマイルC(G1)2着、桜花賞(G1)3着、フィリーズレビュー(G2)2着

4歳:6戦2勝 クイーンS(G3)、府中牝馬S(G3)

5歳:6戦1勝 府中牝馬S(G3)、ヴィクトリアマイル(G1)3着

6歳:2戦0勝 TCK女王盃(G3)2着

 

2歳秋の新馬戦でデビューするも後に阪神ジャンプSを制するマヤノスターダムの2着に敗れます。つづく未勝利戦では先行して抜け出す危なげない競馬で初勝利を飾ります。3戦目にはG1の阪神ジュベナイルフィリーズに挑戦し、未勝利勝ち後で11番人気でしたが、5着と健闘します。

3歳を迎えると紅梅Sではエリモファイナルに、エルフィンSでは後の秋華賞エアメサイアに敗れます。そのため、フィリーズレビューでは7番人気と人気を落とします。勝った圧倒的1番人気のラインクラフトの末脚には屈しますが、前走で敗れたエアメサイア、世代屈指の末脚を誇るディアデラノビアを抑え、2着に入り、桜花賞に向かいます。

桜花賞では主戦の武幸四郎騎手がチューリップ賞を無敗で制したエイシンテンダーに騎乗したこともあり、ミルコ・デムーロ騎手が騎乗します。10番人気までさらに人気を落としますが、2番手から抜け出し、あわやの場面をつくり、ラインクラフトシーザリオとはアタマ、クビ差の3着に健闘します。

次走はオークスには向かわず、NHKマイルCに向かいますが、桜花賞がフロックと考えられたのか再びの10人気で、さらにオッズも20.0倍から36.6倍に上がってしまいました。しかし、レースでは4番手からラインクラフトと抜け出し、再びあわやの場面を作ります。三度ラインクラフトに敗れる結果とはなりましたが、他の馬を抑え2着に入ります。

秋華賞に向け、クイーンSに出走すると春のG1戦線での活躍が評価され1番人気となりますが、レクレドールに敗れ4着となります。秋華賞も3番人気に推されますが、初の1秒以上の大敗となる12着に敗れ、その後のスワンSも2桁着順となってしまいました。

約5か月休養後の阪神牝馬Sも12着と大敗しますが、続くヴィクトリアマイルエプソムCで復活の兆しをみせます。2年連続の出走となったクイーンSでは4角先頭から抜け出し、G1馬ヤマニンシュクル、のちのG1馬ブルーメンブラッドを抑えるという最強の1勝馬の称号を返上する強い内容で、未勝利以来の勝利を初重賞制覇で飾ります。

府中牝馬Sも2番手から抜け出し、サンレイジャスパーディアデラノビアを抑え重賞連勝となりました。

つづくマイルチャンピオンシップで13着と敗れると4か月半の休養に入り、ダービー卿CTで復帰するとヴィクトリアマイルで3着に入るなど、重賞戦線で好走を続けます。秋には府中牝馬Sを先行して抜け出す得意の形で連覇し、エリザベス女王杯に向かうものの12着と敗れ、ダート戦に矛先を向けます。クイーン賞3着、TCK女王盃2着と好走し、フェブラリーS7着を最後にクラブの規定もあり、引退となりました。 

 

 

血統構成

サンデーサイレンス現役時代はケンタッキーダービープリークネスSの2冠を制し、BCクラシックも制しています。引退後は日本で種牡馬入りし、日本の血統図を塗り替えてしまうほどの大種牡馬となります。3冠馬ディープインパクトをはじめ、多数のG1馬、重賞勝ち馬を輩出し、勝利数は現時点で歴代1位となっています。

母デアリングダンジグは調査できた範囲では未出走だったようです。3歳で繁殖入り後はアメリカのスーパーダービーを勝ったEcton Park、武蔵野Sなどダート重賞3勝のピットファイターなど様々な種牡馬から活躍馬を輩出しています。

母の父Danzigは競走馬としては脚元の不安があり、一般戦のみの3戦3勝でしたが、種牡馬としては、大種牡馬ノーザンダンサーの最高の後継種牡馬の1頭に挙げられる大活躍をします。初年度からエクリプス賞最優秀2歳牡馬Chief's Crownを輩出し、その後もベルモントSDanzig Connection、プリークネスSのPine Bluff等のダートの活躍馬、BCマイル連覇のLure、BCマイルのWar Chant等の芝の活躍馬を輩出します。アメリカ国外でも愛2000ギニーのShaadi、ジュライCGreen Desert等の活躍馬を輩出しています。日本でも阪神3歳牝馬Sヤマニンパラダイス、アベイユドロンシャンのアグネスワールド等を輩出しています。また、Green DesertDanehill等の後継種牡馬も大活躍し、Danzig系と呼ばれるまでになっています。

 

私の注目ポイント

なぜ私がデアリングハートを取り上げたかをご紹介します。

1.最強の1勝馬

 

未勝利戦を勝ち上がった後は、阪神ジュベナイルフィリーズに挑戦して0秒3差の5着と健闘し、続けてオープンを2回使った以外は重賞に出走しつづけました。そのほとんどのレースにおいて先行して確実に抜け出すという堅実な走りを見せていました。

しかし、フィリーズレビュー桜花賞NHKマイルCの3連戦のように勝てそうと思ったところラインクラフトに最後に差されたり、先に抜け出されてしまったりとワンパンチ足りないところがあり、個人的には非常に応援していました。

 

2.クイーンSでの初重賞制覇時の強さ

 

1に挙げたように最強の1勝馬で終わってしまうのかと思っていたところ、4歳のクイーンSでは4角先頭からヤマニンシュクル以下を突き放して快勝し、その今までに見たことのない力強い走りに驚かされた記憶があります。

つづく府中牝馬Sも勝ち、ついに本格化したのかと思いましたが、その後は府中牝馬Sを連覇したものの、また元の善戦ウーマンに戻ってしまいました。

 

3.孫から無敗の2冠馬

 

繁殖入り後も期待して見ていたのですが、現時点では目立つ活躍馬が出ておらず、半分忘れかけていました。しかし、子のデアリングバードの子から2020年の桜花賞オークスを無敗で制したデアリングタクトが産まれ、本馬の桜花賞で期待していた私としては非常に嬉しく思うとともに感慨深いものがありました。

こういった思い出が代々つながっていくところが、競馬の面白さの一つではないかと改めて感じているところです。

 

 


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