シルポートの母~スペランツァ
プロフィール
1998年4月17日 牝馬
母 フジャブ
母父 Woodman
厩舎 山内研二(栗)
10戦2勝
主な勝鞍 500万下(札幌芝1200)
競走生活
・JRA
2歳:5戦2勝 新馬、500万下
3歳:1戦0勝
4歳:4戦0勝
※年齢は当時は旧年齢ですが、現在の表記に合わせています。
函館開幕の新馬戦に登場し、藤田伸二騎手を背に圧倒的1番人気に推されるものの 前に行った馬を捉えきれずに3着と敗れます。
折り返しの新馬戦では、きっちりと逃げた馬を捉え初勝利を飾ります。
3戦目にはクローバー賞に挑み、前評判の高かった後の重賞馬ウインラディウスには敗れてしまいますが、2着を確保します。
続く500万下は1倍台の圧倒的人気に応え勝利しますが、その後のすずらん賞はオイスターチケットに逃げ切られ2着となりました。
この後、態勢が整わず5か月休養となり、年明けのクイーンCで復帰しますが、11着と敗れ、再び1年超の休養に入ります。
1000万下で2戦、降級して札幌での500万下で2戦しますが、すべて二桁着順となり、引退となりました。
血統構成
父サンデーサイレンスは現役時代はケンタッキーダービー、プリークネスSの2冠を制し、BCクラシックも制しています。引退後は日本で種牡馬入りし、日本の血統図を塗り替えてしまうほどの大種牡馬となります。3冠馬のディープインパクトをはじめ、多数のG1馬、重賞勝ち馬を輩出し、勝利数は現時点で歴代1位となっています。
母フジャブはイギリスで走り1勝を挙げ、繁殖牝馬としてCaerleonの子を受胎した状態で日本に輸入されます(その子はサウンドオブハート、カフェブリリアントの重賞馬を輩出しました)。本馬の他には4勝を挙げたテンカタイヘイなどを輩出しています。
母の父Woodmanは現役時代は5戦3勝でG3を2勝挙げています。引退後は初年度より米2冠のハンセル、仏2000ギニーのヘクタープロテクターと大物を輩出します。その後もプリークネスSのティンバーカントリー、英1000ギニーのボスラシャム、エクリプスSのホークウィングを輩出し、日本でもスプリンターズSを勝ったヒシアケボノを輩出しています。
私の注目ポイント
なぜ私がスペランツァを取り上げたかをご紹介します。
1.2歳の北海道戦で輝いた山内厩舎
先日引退となった山内調教師の管理馬と言えば2歳の新馬戦開幕からガンガンと使っていくことで有名であり、ご多分に漏れず、本馬も開幕週から使われています。
北海道の2歳戦といえば、必ずと言っていいほどトレードマークのピンクのメンコをした馬が出ていたのではと思うほどです。
今でこそ2歳戦開幕から有力馬でも使っていくことがトレンドになっていますが、当時は早熟馬というレッテルを貼られることが多かったように記憶しています。
素人の見解にはなりますが、仕上がりや調子を維持して続けてレースを使える技術があることで馬の能力も引き上げられ、マイナーな血統の馬であっても活躍する馬が多かった印象です。それだけの技術があればこそ872勝という勝ち星を積み重ねられたのかなと思っています。
本馬は喉なりの影響もあり、2歳の北海道戦がハイライトという形になってしまいました。ただ、山内厩舎では長く活躍する馬もおり、本馬も順調であれば単なる早熟ではないと証明できたのではとも思っています。
2.PO馬としての思い入れ
以前、仲間内でPOGをやっておりました。競馬を楽しむというのが趣旨であったため、年間20頭持つというルールでやっていたのですが、正直私はあまり見る目がなく、数年間だったとはいえ、シーズン内のG1勝利は皆無でした。シーズン後にG1を勝った馬はいるのですが…
その2年目に選択したのが本馬でした。1位か2位で選択したように記憶しています。理由としては2歳戦から強い山内厩舎、気鋭の育成牧場ということだったように思います。
実際に2歳戦でデビューし、藤田騎手もかなりの手ごたえを口にしていたところからも今年は行けるのではないかと思ったものです。その後、喉なりの影響もあり、北海道戦での輝きが見られなくなってしまったのは、非常に残念に思いました。
無事であれば重賞でも活躍できたのではと思っておりましたし、今でもPO馬として思い出す馬の1頭です。
3.大逃げのシルポートを産んだ潜在能力
POGをやっていると選んだ馬が走ることは嬉しいことですが、その子や孫世代が活躍するというのも嬉しいものです。重賞戦線の馬柱に元PO馬の名前を見つけると、正直まったく関係はないのですが、非常に誇らしい気分になります。
当初、シルポートについては、ガンガン逃げる馬がいるなという程度の認識ではありましたが、その母が本馬であることを知った以降は思い入れが強くなり、外連味なく逃げる姿に注目して見ていました。
ホワイトマズルから引き継いだ部分も大きいとは思いますが、テンのスピードや重賞3勝した実績からも本馬も高い潜在能力を持っていたのではないかと思わされます。
ウォーエンブレム産駒の快速馬~ウォータクティクス
プロフィール
2005年2月6日 牡馬
父 ウォーエンブレム
母 アドマイヤハッピー
母父 トニービン
厩舎 池江泰寿(栗)
14戦6勝
主な勝鞍 アンタレスS(G3)(京都ダ1800)、アルデバランS(OP)(京都ダ1800)
競走生活
・JRA
2歳:1戦0勝
3歳:4戦4勝 未勝利、500万下、1000万下、フェアウェルS(1600万下)
4歳:5戦2勝 アンタレスS(G3)、アルデバランS(OP)
5歳:3戦0勝
6歳:1戦0勝
2歳秋に生涯唯一の芝戦となる京都芝1800でデビューすると軽快に逃げますが、3着に惜敗します。
両前脚のソエのため5か月休養し、福島のダート戦で復帰し、持ったまま2着に2秒1差で圧勝し初勝利を飾ります。
再び休養に入り、秋の京都で復帰すると500万下、1000万下、中山のフェアウェルSとすべて4馬身以上の差をつけて圧勝します。
年が明けてオープン入り初戦となったアルデバランSも圧倒的な1番人気に推され、最後はジャパンダートダービーを制していたカフェオリンポスにハナ差まで詰め寄られますが、勝利し、ダートで負けなしの5連勝を遂げます。
初の重賞挑戦となったアンタレスSは1番人気こそ既に重賞3勝していたワンダースピードに譲りましたが、これまで同様軽快に逃げて1分47秒8のJRAレコード(日本レコードタイ)で快勝します。
続いて東海Sに挑みますが、1周目のゴール板前から先頭に立つという作戦を採ったものの、出入りの激しい展開となり、2周目3角から失速してしまい、大差の殿負けとなりました。
復活を期したエルムSは出走取り消しとなり、白山大賞典に参戦しますが、東海S同様に3角で失速し、大敗となります。その後、連勝していた相性の良い京都ダ1800を中心に4戦しますが、先手を取れずにいずれも5着以下に敗れてしまいます。
1年の休養を挟み再度京都ダ1800のアンタレスSを使い、久々に4角を先頭で迎えますが、10着に敗れてしまい、引退となりました。
血統構成
父ウォーエンブレムはケンタッキーダービー、プリークネスSの米2冠を制しています。日本で種牡馬入りしましたが、産駒は好成績を収め、秋華賞のブラックエンブレム、阪神ジュベナイルフィリーズのローブティサージュ、川崎記念のオールブラッシュなど活躍馬を輩出しています。
母アドマイヤハッピーはオークスを勝ちエアグルーヴを輩出したダイナカールの孫にあたり、5戦目に秋華賞に挑戦するなど4勝を挙げています。繁殖入り後は、本馬の他に重賞でも好走したキタサンアミーゴ、ハッピーモーメントを輩出しています。
母の父トニービンはイタリア調教場として27年ぶりに凱旋門賞を制覇し、ミラノ大賞典やジョッキークラブ大賞を制しています。日本で種牡馬入り後はリーディングサイアーにも輝き、ダービー、ジャパンカップを勝ったジャングルポケット、天皇賞秋、オークスを勝ったエアグルーブ、ダービーのウイニングチケット、2冠馬ベガなど多数の活躍馬を輩出し、父系、母系としても日本競馬に大きな影響を与えています。
私の注目ポイント
なぜ私がウォータクティクスを取り上げたかをご紹介します。
ウォーエンブレムは先日亡くなってしまいました。好みの繁殖牝馬以外との種付けを拒否したため、産駒はこのクラスとしては非常に少ないですが、出走した7割超の産駒が勝ち星を手にし、年次別のAEIでも3を超える好成績を収めています。
サンデーサイレンスの5点台は別格としてもディープインパクトは3点台後半、トニービンやブライアンズタイムが2点台後半であることからもチャンピオンサイアークラスのポテンシャルを持っていたのではないかとも思います。
実際に1年目は4頭、3年目は5頭しか産駒がいないにも関わらず、すべてが勝ち上がっており、2年目も27頭出走して、20頭が勝ち上がり、7頭も重賞を制覇しています。
Northern DancerやHail to Reasonを持たないMr.Prospector系として活躍が期待できたとも思われ、もっと産駒が多ければ、また違った勢力図になっていたのかもしれないと思わされます。
2.逃げて圧勝の快速ぶり
連勝時は自らレースを作って好タイムで勝つという非常に強い内容でした。特にJRAレコードとなったアンタレスSでは、序盤はスピードの違いで先頭に立ち、4角では後続は早くから仕掛けているものの持ったままで迎え、直線突き放して勝つという内容でした。正直これでJRAレコードと表示された時には、プレミアムサンダーの時とは違う驚きがありました。
こんなに悠々JRAレコードが更新されてしまうのかと末恐ろしい感じがしたものです。
3.ダイナカールにつながる名牝系
改めて血統を見てみると名牝系であるダイナカールの曾孫にあたります。ダイナカール自体、オークスを勝った名牝ではありますが、エアグルーヴ~アドマイヤグルーヴ~ドゥラメンテと4世代にわたるG1馬のラインやG1馬であるオレハマッテルゼ(本馬の母アドマイヤハッピーの弟)、ルーラーシップ(エアグルーヴの子)など現在の競馬界を引っ張る牝系の一つであると言えるかと思います。
そのような血統に産まれた本馬も期待にたがわぬ走りを見せてくれました。惜しむらくは、東海Sでの大敗から立ち直ることができなったために、競走馬としても種牡馬としても全ての力を見ることができなかった点でしょうか。
どれくらいのポテンシャルがあったのかは見てみたかった気がします。
バンドワゴン
プロフィール
バンドワゴン
2011年2月18日 牡馬
父 ホワイトマズル
母 ピラミマ
母父 Unbridled's Song
厩舎 石坂正(栗)
13戦4勝
主な勝鞍 但馬S(1600万下)(阪神芝2000)、きさらぎ賞(G3)(京都芝1800)2着
競走生活
・JRA
3歳:1戦0勝 きさらぎ賞(G3)2着
5歳:4戦1勝 長久手特別(1000万下)
6歳:4戦1勝 但馬S(1600万下)
7歳:2戦0勝
2歳秋に和田竜二騎手を背にデビューすると、その後4連勝で弥生賞を制覇し、皐月賞、有馬記念でも2着する良血馬トゥザワールド相手に逃げ切り圧勝します。勝ちタイム1分48秒0、上がり3ハロン33秒5とも優秀でした。
その結果を受けて、2戦目のエリカ賞は圧倒的1番人気に推され、その後重賞戦線でも活躍するヴォルシェーブ相手に逃げ切り圧勝しました。このレースも上がり3ハロンは逃げ馬ながら1位を記録し、ホワイトマズル産駒の大物と注目されるようになりました。
続く3戦目きさらぎ賞では、京都2歳Sを勝ってきた良血トーセンスターダムと人気を二分し、本馬が1倍台の1番人気に推されました。このレースでもこれまで同様に逃げますが、武豊騎手のトーセンスターダムに計ったようにゴール板のところで差され、初の黒星を喫します。負けてなお強しという内容であり、クラシックに期待を抱かせましたが、脚部不安により2年休養となってしまいました。
復帰初戦は初のダート戦ということで行き脚がつかず、大敗してしまいますが、さらに5ヶ月休養後の長久手特別では、これまで同様の逃げ切り勝ちを収めます。
1600万下昇級後は一転して差す競馬を身につけ、昇級3戦目の但馬Sを上がり最速で制し、再びオープンに昇級します。
オープンでは3年半ぶりの騎乗となった和田騎手で久々の逃げ戦法をとるなどしましたが、重賞3戦、オープン2戦して掲示板に載ることができず、引退し、種牡馬入りとなりました。
血統構成
父ホワイトマズルはイタリアダービーに勝ち、凱旋門賞、キングジョージで2着したダンシングブレーヴがヨーロッパに残した数少ない産駒の1頭です。引退後は日本で種牡馬入りし、天皇賞春のイングランディーレ、オークスのスマイルトゥモロー、菊花賞のアサクサキングスなど活躍馬を輩出しました。
母ピラミマは現役時代2戦未勝利に終わりましたが、繁殖入り後は本馬をはじめ、ジャパンカップ、大阪杯を勝ち、ダービーでも2着したスワーヴリチャード、2戦目のクイーンCで1番人気に推されたルナシオンなどを輩出しています。
母の父Unbridled's Songは名種牡馬Unbridled産駒としてBCジュベナイル、フロリダダービーを勝利しています。種牡馬としてもドバイWC、ペガサスWC、BCクラシックを勝ったArrogateやBCディスタフを勝ったForever Unbridled、Unbridled Elaineなど多数のG1馬を輩出しています。日本でもラヴェリータ、アグネスソニックを輩出しました。
私の注目ポイント
なぜ私がバンドワゴンを取り上げたかをご紹介します。
1.2歳時の圧倒的なパフォーマンス
新馬戦でのちに弥生賞を制覇し、皐月賞、有馬記念でも2着するトゥザワールドに圧勝するなど逃げながらも上がり最速という圧倒的なパフォーマンスを2戦連続で見せてくれました。久しぶりに和田騎手が中央のG1を制覇するチャンスが回ってきたのではないかと思ったものです。
比較的注文の付く脚質ではありますので、G1とは言わないまでも順調であれば重賞の1つ2つは買っていたのではないかと思ってしまいます。
2.スワーヴリチャードの兄
スワーヴリチャードがバンドワゴンの弟であると聞いた時にスワーヴリチャードは走る馬ではないかと思い、応援しておりました(ハーツクライ産駒というひいき目もありますが…)。そのため、ダービーで2着し、大阪杯、ジャパンカップで勝った時は非常に嬉しく思いました。
その時にはバンドワゴンが順調であれば、どれくらいだったのかと思いを馳せておりました。
妹にもディープインパクト産駒のルナシオンがいるなど、異なる種牡馬で活躍馬を輩出できる母ピラミマは優秀な繁殖牝馬と言えるかと思います。
また、こういった産駒を産み出すことを期待して、海外でピラミマを生産していたノーザンファームにも感服してしまいます。
3.日本では非主流の血統
現在主流であるサンデーサイレンスはおろか、その祖父Hail to Reasonの血も入っておらず、またNorthern Dancerが4代前、Mr.Prospectorも5代前にいるのみです。欧米の血の粋が集まっており、完全な異系というわけではありませんが、日本では非主流と言える血統ではないでしょうか。2歳時のパフォーマンスやスワーヴリチャードの活躍からも繁殖牝馬が集まれば、大仕事が期待できる種牡馬になる可能性を秘めているのではないかと思っています。
山内厩舎で鍛え抜かれた強さ~ダンツシリウス
プロフィール
1995年3月29日 牝馬
父 タマモクロス
母 スイートニース
母父 ハードツービート
厩舎 山内研二(栗)
12戦3勝
主な勝鞍 チューリップ賞(G3)(阪神芝1600)、シンザン記念(G3)(京都芝1600)、阪神3歳牝馬S(G1)(阪神芝1600)3着
競走生活
・JRA
2歳:9戦1勝 未勝利、阪神3歳牝馬S(G1)3着
3歳:3戦2勝 チューリップ賞(G3)、シンザン記念(G3)
※年齢は当時は旧年齢ですが、現在の表記に合わせています。
山内厩舎らしく函館開幕週の世代最初の新馬戦に登場し、1番人気に推されるも9着と大敗します。2戦目は5番人気に落ちますが、2着と巻き返します。その結果を受けて3戦目は圧倒的1番人気に推され、人気に応えて初勝利を挙げます。
4戦目の500万下ではロンドンブリッジとの逃げ争いに敗れ、5着となります。
5戦目には札幌3歳S(G3)を選びますが、14頭立て14番人気となり、結果もブービーから3馬身話された14着と大敗してしまいました。
りんどう賞は距離短縮と中団からの競馬で2着と巻き返し、ファンタジーS(G3)に挑みますが、再びロンドンブリッジに敗れ5着となります。
白菊賞を挟み、G1の阪神3歳牝馬Sにペリエ騎手を背に挑みます。 8番人気でしたが、レースは直線に入り、先頭に立ち、あわやの場面を作りますが、内からアインブライドに掬われ3着となりました。
このレースで自信をつけたのか、つづくシンザン記念では圧倒的1番人気のアグネスワールドを不良馬場とはいえ5馬身ちぎって圧勝します。
さらにチューリップ賞では素質馬ファレノプシス、阪神3歳牝馬Sで敗れたアインブライドなどを相手に中団から差して快勝します。
これを受けて桜花賞では1番人気に推されますが、レース中のケガもあり11着と敗れます。完治はしたものの再び骨折し、そのまま引退となりました。
血統構成
父タマモクロスは3歳秋に開花し、天皇賞春・秋、宝塚記念とG1を3勝を含む8連勝を挙げています。1歳下のオグリキャップとの芦毛対決も話題になりました。種牡馬入り後も内国産種牡馬の雄としてマイソールサウンド、カネツクロス、ラティールなどの活躍馬を多数輩出しています。
母スイートニースは未出走のまま繁殖入りしますが、同馬の他に東京障害特別(春)を勝ち、中山大障害(春)と(秋)で2着したマイネルトレドールを輩出しています。
母の父ハードツービートはフランスダービー、リュパン賞などG1を3勝しています。種牡馬入り後はディアヌ賞のDunetteや最優秀障害馬オンワードボルガなどを輩出しました。ブルードメアサイアーでもカナディアンインターナショナルSのフレンチグローリーや中山大障害のランドパワーなどを輩出しています。
私の注目ポイント
なぜ私がダンツシリウスを取り上げたかをご紹介します。
1.2歳戦からガンガン使う山内厩舎
山内調教師は先日引退となりましたが、山内厩舎と言えばピンクのベンツマークのメンコに2歳戦での強さが印象的です。
今でこそ期待馬が2歳の夏デビューすることが多くなりましたが、当時は秋の東京・京都でデビューするのが相場でした。それとは一線を画し、夏の北海道で多くの管理馬をデビューさせ、勝ち上がるとともにレースを使って鍛えていくというスタイルはPOGをやっていたものとしては、心強い存在として必ず1,2頭は入れたものでした。
本馬も世代最初の新馬戦に登場するなど仕上がりが早く、2歳戦だけで9戦しました。5戦目の札幌3歳Sで最下位と大敗した時には、まったく気にもかけていなかった馬が阪神3歳Sであわやの3着、強いレースで重賞連勝、桜花賞で1番人気に推されるとは想像もつきませんでした。
レースを使うごとにレースぶりに幅が出て、強さがついていった印象があります。
2.山内調教師&四位騎手コンビ
阪神3歳牝馬Sは正直ペリエ騎手ということで私は本命にしていたため、ややフロックかなという印象で続くシンザン記念は見ていました。するとアグネスワールドを相手に5馬身差の圧勝でした。この時の背が先日引退となった四位洋文騎手でした。
山内厩舎というと藤田伸二騎手とのコンビも印象深いものがありますが、四位騎手とのコンビも印象深いです。
このコンビで印象的なのが皐月賞も勝ったイシノサンデーとのコンビ。栗毛のサンデーサイレンス産駒、皐月賞後のダート参戦という特異なプロフィールを持つ馬でしたが、皐月賞では四位騎手に初G1をもたらしています。
今回山内調教師、四位騎手が引退ということでイシノサンデーとともに真っ先に思い出したのがダンツシリウスでした。12戦中4戦しかコンビを組んでいないのもの、叩き上げの強さやハマった時のレースぶりというところが2人にピッタリという印象が残っていたのかなと思います。
3.タマモクロス産駒
G1を3連勝したタマモクロスでしたが、種牡馬としてはサンデーサイレンス、トニービン、ブライアンズタイムと海外出身の種牡馬が全盛となる時期と重なってしまいました。そのため、多くの内国産種牡馬はその余波を受けて思っていたよりも活躍することができませんでしたが、タマモクロスはその中でも活躍した種牡馬の1頭と言えるかと思います。
父シービークロスに続く内国産種牡馬としてマイソールサウンド、カネツクロス、シロキタクロス、ラティールなど中央G1は勝てなかったもののG1、重賞戦線を沸かし続けた名脇役を多数輩出しました。長く活躍する個性派も多く、タマモクロス産駒を重賞の馬柱で見かけると常に応援はしていた記憶があります。
本馬は桜花賞で1番人気とG1制覇に近かった1頭だと思っていただけに故障してしまったのが、本当に残念でした。
キヨヒダカを超えた馬~プレミアムサンダー
プロフィール
プレミアムサンダー
1994年3月13日 牡馬
母 Seattle Dawn
母父 Grey Dawn
厩舎 大沢真(栗)
8戦4勝
主な勝鞍 トパーズS(OP)(京都ダ1800)、京都4歳特別(G3)(京都芝2000)2着
競走生活
・JRA
2歳:3戦1勝 新馬
3歳:3戦2勝 トパーズS(OP)、君子蘭賞(500万下)、京都4歳特別(G3)2着
4歳:2戦1勝 ムーンライトH(1600万下)
※年齢は当時は旧年齢ですが、現在の表記に合わせています。
2歳秋にダート1400でデビューし、圧倒的1番人気に推されるも逃げ馬を捕らえきれずに2着に惜敗します。
折り返しとなる2戦目の新馬戦は芝1600でしたが、きっちりと逃げ馬を捕らえ、初勝利を飾ります。3戦目のエリカ賞も圧倒的1番人気に推されますが、生涯唯一の3着以下となってしまいました。
4か月休養して君子蘭賞に向かい、のちの菊花賞馬マチカネフクキタルを一気に差し切りました。
続いて京都4歳特別に挑戦します。武豊騎手は、前走で若草Sを自身の手綱で勝ったシルクジャスティスではなく、本馬に騎乗しましたが、レースは捲るように上がってきたシルクジャスティスに交わされ、2着に惜敗します。それでも3着馬とは7馬身もの差がついており、能力の高さを示します。
6か月休養し、復帰戦に選んだのはデビュー以来となるダート戦のトパーズSでした。このレースではサンエムキングの作った早いペースを最後方で追走し、直線だけでまとめてオースミジェットなど全馬を交わして日本レコードを樹立して勝利します。その時の上がり3ハロンは34秒7、1ハロンは11秒7と芝並みの切れ味を披露しました。
再び休養に入り、降級となります。復帰初戦のやまなみSはナナヨーウォリアーと捕らえられず、2着惜敗しますが、2戦目のムーンライトHは先行馬を差し切り約10か月ぶりの勝利を挙げますが、このレースが最後となってしまいました。
血統構成
父Easy GoerはともにG1馬のAlydar、Relaxingを両親に持つ良血で現役時代はサンデーサイレンスとライバル関係にありました。ケンタッキーダービー、プリークネスSではサンデーサイレンスに敗れてしまいますが、ベルモントSでは勝利を収めました。合わせて9つものG1を制しています。種牡馬としてはトラヴァーズSを制したWill's Way、CCAオークスを制したMy Flagなどを輩出しています。
母Seattle Dawnはアメリカで走り、デラウェアH、スノーグースHの重賞を含む7勝を挙げています。繁殖入り後はゴールデンロッドSを制したゴールドサンライズなどを輩出しています。
母の父Greay Dawnは仏英米で走り、グランクリテリウム、モルニー賞、サラマンドル賞を制します。特にグランクリテリウムでは、名馬シーバードに生涯唯一の黒星を付けています。種牡馬入り後はエイコーンS、ケンタッキーオークスを勝ったHeavenly Cause、CCAオークスを勝ったChristmas Pastなど25頭のステークスウィナーを輩出し、1990年には北米リーディングブルードメアサイアーにも輝いています。
私の注目ポイント
なぜ私がプレミアムサンダーを取り上げたかをご紹介します。
1.キヨヒダカを超える日本レコード
競馬ファンであれば誰でも知っているであろう中山ダート1800のレコードホルダーのキヨヒダカ。この馬の持つ、1分48秒5という記録は40年近くも前の記録になりますが、馬場が変わっていることもあり、中山ではよほどのことがないと更新されることはないのではないかと言われています。
同時に1分48秒5は長らく日本レコードでもありました。私自身ダート1800を1分50秒を切る馬をほぼほぼ見かけず、タケシバオーのダート1700のレコード並みに更新されないものと思い込んでおりました。
すると本馬が最後方一気で軽々と日本レコードをマークしてしまい、愕然とした記憶があります。春にシルクジャスティスと接戦を演じていた馬であり、納得のいく部分もあるのですが、それにしても速いタイムであの衝撃はいまだに忘れられません。
ちなみにキヨヒダカの父ホープフリーオンは本馬の父父であるAlydarの全兄にあたり、何か縁を感じる部分ではあります。
無事ならばどれくらいダートで強かったのか見てみたかったという気はします。
ダートで日本レコードを作った同馬ですが、3歳の春までは主に芝で実績を残していました。
京都4歳特別では、前走若草Sを快勝し、この年当たり年であったブライアンズタイム産駒のシルクジャスティスが如何に勝つのかという感じで見ておりました。なぜ前走シルクジャスティスに乗っていた武豊騎手が本馬に乗っているのか、やや疑問に感じながら。
レースでは本馬が先行し、シルクジャスティスは後方からレースを進め、3コーナーから捲り気味に上がっていきます。これは楽勝かなと思ったところ、本馬も必死の抵抗を見せ、マッチレースになりました。最後はシルクジャスティスがねじ伏せた形にはなりましたが、本馬も非常に強いレースを見せてくれました。
この後、シルクジャスティスが日本ダービーで2着、有馬記念を制したことを考えても本馬も芝でそれだけの強さを秘めていたというのではないかと思います。
芝、ダートともチャンピオンクラスになってもおかしくなかったという気はします。
3.Easy Goer産駒
Easy Goerと言えば現役時代にサンデーサイレンスとのライバル関係が有名です。良血対雑草、追い込み対先行、栗毛対青鹿毛など正反対の関係性でした。
Easy Goerはアメリカで種牡馬入りし、サンデーサイレンスは日本で種牡馬入りとなりました。サンデーサイレンスは初年度から活躍馬を多数輩出し、大種牡馬の道を進み始めていました。
そのような時に登場したのがEasy Goer産駒であるプレミアムサンダーでした。君子蘭賞でマチカネフクキタルに勝利、京都4歳特別でのシルクジャスティスに食い下がったレースぶり、トパーズSでの日本レコードと高い資質を見せてくれました。
日本でもEasy Goer対サンデーサイレンスが見られるのかと期待したのですが、本馬はその後順調に使えず、また父のEasy Goerも早世してしまい、あまり見ることができなかったのは残念でした。
種牡馬入り後に見せた高い資質~フィガロ
プロフィール
1995年3月4日 牡馬
父 Future Storm
母 Karamea
母父 Air Forbes Won
厩舎 西橋豊治(栗)→高松邦男(美)
3戦2勝
主な勝鞍 京都3歳S(OP)(京都芝1800)
競走生活
・JRA
2歳:3戦2勝 京都3歳S(OP)、朝日杯3歳S(G1)3着
※年齢は当時は旧年齢ですが、現在の表記に合わせています。
秋の京都でデビューすると4番人気と人気はなかったものの上がり3ハロン33秒8の末脚を見せて8馬身差の圧勝を果たします。
2戦目の京都3歳Sも3番手からしっかりと抜け出し、連勝を飾ります。
3戦目には朝日杯3歳Sが選ばれ、圧勝を続けていた怪物グラスワンダーに次ぐ2番人気に推されます。3番手で直線に向き、見せ場は作ったもののグラスワンダーの前に3着に敗れてしまいました。
年明けきさらぎ賞に向けて調整中に骨折が判明してしまい、復帰を目指したものの復活することができず、2001年秋に引退となりました。
血統構成
父Future Stormは大種牡馬Storm Cat×今だイギリス最強馬ともいわれるSea-Bird牝馬という良血で欧米で走りG3を2勝しています。種牡馬入り後はマーヴィンリロイHを勝ったFuturalなどを輩出しています。
母Karameaはアメリカで走り5勝を挙げて繁殖入りしました。フィガロ以外の産駒は調べた限りではわかりませんでした。
母の父Air Forbes Wonはアメリカで走り、ウッドメモリアルS(G1)を勝つなど4勝を挙げています。種牡馬入り後はフロリダダービーなどを勝ったMercedes Won、エイコーンS、マザーグースSなどG1を5勝したYanks Musicなどを輩出しています。
私の注目ポイント
なぜ私がフィガロを取り上げたかをご紹介します。
1.アメリカの血統の粋
5代血統表をみるとStorm Cat、Secretariat、Sea-Bird、Turn-to、Bold Forbes、Round Table、Tom Fool、Hill Princeなどアメリカ競馬を作ってきた名種牡馬が含まれています。サラブレッドという強く速い馬を作るために「徹底的に品種改良された」馬である以上、良い種牡馬を掛け合わせ続けることは当然ではありますが、この馬の血統表を見るとこの種の使命みたいなものを改めて感じされられます。
2.若き日の福永祐一騎手
当時2年目だった福永騎手ですが、フィガロの世代ではキングヘイローという良血のお手馬もいました。 キングヘイローで初重賞勝ちとなるのですが、当時の個人的な印象としてはそつなく乗るのだけど勝負弱い感じがしておりました。
フィガロの朝日杯3歳Sやキングヘイローのラジオたんぱ杯3歳Sなどはそんな印象のレースだったように思います。
ただ、こういった馬との出会いや弛まない努力により今の地位に上って行かれたのかなと特集番組などを拝見していると思わされます。その後のエイシンプレストンの香港遠征やワグネリアンのダービーなどはそういった認識を改めさせられました。
3.種牡馬入り後の活躍
種牡馬入りすると地方競馬を中心に活躍馬を輩出します。東京ダービーを勝ったアンパサンド、プレティオラスを出しています。さらにプレティオラスの代は当たり年で京浜盃のパンタレイ、東京ダービーでワンツーしたプーラヴィータが出ています。
頭数は少ないですが、これだけの産駒が出ているということは高い素質を持っていたということではないかと思います。
また、これだけダートでの活躍馬がいるとなると、本馬は芝しか走ってはいませんが、ダートでも強かったのではないかと想像してしまいます。
スペシャルウィークに勝つために生まれた馬~アサヒクリーク
プロフィール
アサヒクリーク
1995年5月24日 牡馬
父 ジェイドロバリー
母 コスモオリンピア
母父 テュデナムキング
厩舎 松村勇(愛)
8戦3勝
主な勝鞍 白梅賞(500万下)(京都芝1600)
競走生活
・愛知
2歳:5戦2勝 中央認定、3歳特別
3歳:2戦1勝 白梅賞(500万下)
5歳:1戦0勝
※年齢は当時は旧年齢ですが、現在の表記に合わせています。
名古屋で名手吉田稔騎手を背にデビューすると、初戦は大敗しますが、 2戦目には変わり身を見せて圧勝します。
3戦目は後に中央参戦で活躍するダイユウカイソクに敗れますが、5戦目の3歳特別を圧勝し、2歳を終えます。
3歳になり、その初戦に選んだのが、中央の白梅賞(500万下)でした。このレースにはこの後にダービーを制覇することになる評判馬スペシャルウィークが出ており、どのように勝つかが注目されたレースでした。しかし、スペシャルウィークは想定された伸びがなく、アサヒクリークが内からスルスルと脚の伸ばし、ハナ差競り勝ちました。
続いてきさらぎ賞(G3)に挑戦しますが、スペシャルウィークの巻き返しがあり、大敗してしまいます。このレースで故障していたという話もあったようで、そのまま長い休養に入ります。
復帰は2年弱後の名古屋のカトレア特別となりましたが、往時の力はなかったようで、1秒4差で敗れてしまい、引退となりました。
血統構成
父ジェイドロバリーは大種牡馬Mr.ProspectorとNumberとの間に産まれ、仏のグラン・クリテリウムを勝っています。ヌレイエフ、サドラーズウェルズなどの良血がいることから日本で種牡馬入りすることになりました。種牡馬入り後は初年度から南部杯タイキシャーロック、阪神3歳ヤマカツスズランなど活躍馬を輩出しました。
母コスモオリンピアは中央の短距離で3連勝しました。繁殖入り後は愛知で8勝したルーフガーデンなどを輩出しています。
母の父テュデナムキングは天皇賞秋、有馬記念でともに2着のあった名中距離馬でした。種牡馬としては海外遠征の帯同馬としても名を馳せたドージマムテキなど主に短中距離馬を輩出しています。
私の注目ポイント
なぜ私がアサヒクリークを取り上げたかをご紹介します。
1.スペシャルウィークに大金星
白梅賞の大金星、それに尽きると思います。20年以上経ちましたが、いまだにきさらぎ賞の時期になるとこの馬を思い出します。スペシャルウィークがきさらぎ賞を快勝するのですが、アサヒクリークに白梅賞で負けてしまったことで、自己条件のつばき賞を使おうとしたところ除外され、格上できさらぎ賞を使い、勝ったことで一躍スターダムに駆け上がりました。元々、きさらぎ賞を使う予定であったとも言われていましたので、結果的には予定通りにはなったのでしょうが、すこし違っていれば、少し歴史も変わっていたのかもしれません。ダービー馬になるのですから、そういうものを超えているものも持っているとは思います。そういうスペシャルウィークを感じる上では忘れられない馬です。
2.意外性の武幸四郎騎手
武幸四郎騎手(現調教師)は初勝利を重賞で飾るなど予想を超えた結果を数々もたらしてくれる騎手でした。G1の6勝はすべて1番人気以外、重賞28勝中1番人気は4勝しかないなどと大駆けのイメージのある騎手です。ソングオブウインドで勝った菊花賞の2着横山典弘騎手、3着武豊騎手の「まさか幸四郎がいるとは…」というコメントに凝縮されているような気もします。
調教師試験も一発合格と意外な面も見せてくれました。きっと意外な馬であっさりとダービーなども勝ってしまうのではと期待してしまいます。
3.活発だった地方馬参戦
最近はだいぶ少なった地方馬の芝参戦ですが、この頃はそれなりに見受けられ、同じ白梅賞にも出ていたダイユウカイソクなどは2勝を挙げました。北海道シリーズの道営の馬以外にも高崎のタマルファイターなどオープンクラスでも勝つような馬もいました。
そういえば、07年に大穴を連続で開けた道営のハートオブクィーンの2勝もアサヒクリークと同じ武幸四郎騎手でしたね。
昨今の動きからなかなか難しいとは思いますが、また新たな地方馬の芝参戦には期待したいです。